呪いの王となる前の。【宿儺】

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side宿儺



貴「ーー私はもう、貴方様の虜なのです」

そう言うAの顔は、数週間前とは違っていた

宿(いや、相変わらず頬を赤らめてはいるな)

だがその顔は下ではなく、
まっすぐ俺の方を向いていた。


そして心の底から幸せそうに笑うのだ。







俺は、人間がこんな表情をすることを知らなかった。

そして、それが自分に向けられていることに困惑した。



だが同時に、その顔を、その声を、
他の何者にも見せたくも聞かせたくもないという、

欲が出てきた。


およそ愛というものを知らん俺だが、それでも分かることもある。






おそらく、俺がAに抱く感情は、親愛などでは無い。







だが、この感情は、容易に言葉にしていいものでは無い。

それはAを縛る。







俺は化け物だ。Aがそれを良しとしても、周囲はそうは思わんだろう。

俺と共に生きるということは、俺と同じ運命を辿るということだ。


Aは家のことをああ言ってはいたが、まだ引き返すことも出来るのだ。








俺はAから目を逸らした

宿「よくそんな恥ずかしいことを、堂々と言えるな」

貴「言えますよ、本当のことですから」

宿「！」






宿(フッ、本当に…厄介な女だな)

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