携帯電話 ページ10
というか、そもそも
どうして生きようと思ったんだっけ。
あぁ_________そうか。
“君の生きる理由が、僕じゃダメかい。”
あなたが、そんなことを言うから。
あなたが私を生かしてしまったから。
あなたに会うために生きようと思った。
だけどね。
あなたの顔を見ることはもうできない。
あなたのプレーを見ることももうできない。
あの日、この部屋で彼に言われたのに。
いつか一緒にボールを蹴ろうって。
もうできない。
だってボールが見えない。
自分の足元にボールが届いても
それが誰からのボールかすらも分からない。
あなたに会いに行くと約束したのに、
その道が 私にはもう見えない。
一人じゃどこも、歩けない。
「………あ…。」
こんな私の心を見透かしているかのようなタイミングで
どこからか、携帯のバイブ音が聞こえてきた。
「…ど、こ？」
自分の体にもわずかに振動を感じるから
きっとベッドの上に置きっ放しにしてあったんだろう。
私に電話をかけてくるだなんて
きっとあの人しかいない。
布団をめくって、ベッドの上をペタペタと触る。
________聞きたい。
声が、聞きたい。
必死に隠した本心が、こんなにもあっさりとまた見え隠れするなんて
本当にあなたはどうかしてる。
「…あ。」
ひんやりと冷たい、固い何かに小指が触れた。
それをそっと持ち上げる。
「…え…っと。」
触り慣れているはずの携帯なのに
どこに触れれば電話に出られるのか
________全く分からなかった。
自分の手の上で鳴り続けるバイブ音を前に、何もできない。
そもそもこの電話が本当にあの人からかかってきているのか確かめることすらできないし
メッセージを受け取っても
それを見ることも、送ることも
今の私には何も_________。
じきに、携帯のバイブ音も鳴り止んで
病室に再び静寂が戻った。
声を押し殺して
泣くしかなかった。
「388番さん、12時になりました。お昼ご飯を…」
時間すら、
大崎さんが部屋に来た時にしか分からない。
「手術のせいですか。」
彼女の言葉を遮るように、私は言う。
「それはまだ何とも言えないけど…。」
「じゃあなんで！」
今まで、感情を抑えていたわけではない。
ただ現実を、認めたくなかったんだ。
何かの夢だと思いたかった。
でも、遂に目から涙がこぼれてしまったから。
彼のことを考えてしまったから。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
