お母さん ページ37
「まもなく着陸態勢に入ります。座席のリクライニングを……。」
そんな声で、目が覚めた。
「あ…はい。」
知らない人越しに見る窓から、真っ青な空が見える。
東京の天気は晴れ、現在の時刻は午前11時55分。
そんなアナウンスが流れて、飛行機が止まった。
一斉に立ち上がる人々。
ざわめく機内。
__________ただいま。
大きなスーツケースを引っ張って、空港を出る。
日本語の会話が懐かしい電車の中も
雑多な街の風景も
あの日と何ら変わっていない。
だけど、私はもうひとりじゃない。
…ううん、私はあの時だって
ひとりぼっちなんかじゃなかったんだ。
だって記憶の片隅に、彼がいたから。
着いたのは、こじんまりとしたマンションだった。
大きなスーツケースを小さなエレベーターに押し込んで、6階のボタンを押す。
正直、もうヘトヘトだ。
病み上がりに飛行機で長旅を繰り返して
こんな大きな荷物を1人で引きずって、疲れない人なんてきっといない。
こんな私を、お母さんは何と言って迎えてくれるかな。
帰れというかな。
少しは話を聞いてくれるのかな。
どっちでもいい。
ただ、私は前に進みたい。
インターホンの音が、軽快に鳴る。
なぜだか私は、笑顔になる。
「_________はい。」
懐かしい声に、泣きそうになる。
「……おか、あさん。」
何も、返事はない。
いいんだ、
なんの答えも求めていない。
だけどたった一言だけ、聞いてほしい言葉があるんだ。
「_________ただいま。」
その言葉に、インターホンの向こうの人はやっぱり何も返さなかった。
__________なぜなら
「……っ…」
このドアを
開けにきてくれたから。
私に、会うために。
「Aっ……。」
お母さんは、驚くほど見違えて痩せ細っていた。
実際に経っていた時間よりも
随分老け込んでいるように見えた。
「A…ごめんね。本当にごめんね。」
そして彼女は、私を見るなりその場に崩れ落ちた。
「お母さん…？」
「ずっと会いたかった。あの瞬間からずっと…。」
「ど、どういうこと？」
「ううん…ごめんね。体はもう大丈夫なの？…あぁ、疲れてるよね。お家上がって。」
疲れ切ったような
でも、優しさのある声に促されるまま
私は全く知らない家に足を一歩踏み入れた。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
