原因 ページ35
「じゃあ…そろそろ戻ろうか。」
彼のその一言を合図にして、私たちは出口へと歩き出す。
私の歩幅に合わせて歩いてくれる彼のことを
心から愛おしいと思った。
空っぽになった車椅子は、彼が選手の控えエリアから外に運んでくれた。
平気で歩いて出てきた私を見て、大崎さんは驚きすぎて言葉を失っていたけど
なんとか状況を飲み込んだようだ。
よかった、よかったと何度も言いながら
彼女はハンカチで涙を拭っていた。
「それじゃ、僕は寮に戻るよ。今日は優勝祝いだから盛り上がりそうだな。」
彼と別れるのが、少しだけ名残惜しいけど
「じゃあ…また日本で。」
「うん。連絡する。」
もう、あの時みたいに寂しくないんだ。
彼の話によると、たった3日後には日本でまた会えるらしい。
だからそれまでに、私は_________
暮らす場所と家族のことを、何とかしなければ。
「今日はありがとう。会えて本当に嬉しかった。」
別れた後、彼と交換した某コミュニケーションアプリの連絡先からそんなメッセージが届いた。
彼のメッセージをちゃんと読める喜びが、
このメッセージに自分で文字を打って返信できる喜びが
じわりじわりと私の心を温めてくれた。
「Aちゃん、行くわよ。」
それからと言うもの、大崎さんは私のことを名前で呼んだ。
病院を出てもなお私のことを番号で呼んでいたのは、
私の名前を初めて呼ぶのは絶対に野坂くんだ、と
彼女なりに考えていたかららしい。
私を空港に送るまでの間、彼女は私にこんな話をしてくれた。
私の目が見えなくなった原因は、おそらく
全身麻酔で眠っている間に脳が火事の中であった出来事を思い出して
その時のパニックや辛さを無意識に思い起こし、
これ以上ダメージを受けないように視界をシャットダウンしようとしたから。
だけど、野坂くんと話して
あの火の中で彼が自分を救ってくれたことを自力で思い出したことで
視界を遮る必要なんてない、
本当はもっと色んな世界を見たいんだということに気がついた。
だから私は、彼と話している間に視力を取り戻したらしい。
あくまで推測だけどね、と
彼女はまた付け足した。
だけどきちんと筋は通ってるし
大体合っているんだろう。
全くお騒がせな脳だけど、
こんな脳でも 野坂くんとの繋がりだけは
記憶の片隅に残しておいてくれたみたいだ。
だからこれからは、飛び切り愛そう。
この、私の中枢を。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
