景色 ページ32
この時に見えた景色を、
私はきっと一生忘れない。
あの日の炎と似た、夕焼けの赤色に包まれて
苦しくなるほど切なくて
だけど力強い表情であなたは立っていた。
それが私の、
手術後初めてハッキリと見た輪郭の景色だった。
「野坂、悠馬___________。」
覚えてる、
思い出したよ。
あなたの名前。
「あなたが…私の命を……。」
死んでしまいたい。
もう逃げる気力もない。
そんな思いでいっぱいいっぱいだった私に
あなたは強引な約束を取り付けた。
“必ず 僕に会いに来ると誓ってくれ。”
それだけで死にたいという思いを振り切れたわけじゃない。
でも
一瞬だけ、私が逃げる理由が見えた。
私が生きる理由に、少しだけ触れた。
私のことを
待ってくれる人がもしもいるなら。
たとえそれが嘘だとしても、
どうせならその言葉が本当かどうか試せるまで
命を賭してみてもいいのかもしれないと
あの時 朦朧とした意識の中で考えて
窓から外へと飛び出したんだ。
「やっと…思い出してくれたの。」
「…あなたはずっと、分かっていたの？」
「ごめんね。本当は、あの日君に会った時から分かっていたんだ。君の寂しそうな目も、声も、あの時のままだっただから。」
久しぶりに見る綺麗な世界の中で、
あなたは言う。
あなたの目が、ちゃんと見える。
「僕の話を、聞いてくれる？」
私に背を向けながら、彼は言った。
赤い夕陽の中に溶け込むその背中が
眩しくて、儚くて
とても切なかった。
「…うん。聞かせて。」
「ありがとう。…あの日、僕が君の妹を見て炎の中に飛び込んだのは 決して正義感があったからとかいうカッコいい理由じゃない。ただ単に、生きることに興味がなかったから飛び込んだんだ。」
生きることに、興味がない_________。
あの日の私と、まるで同じ。
私たちあの時、
同じところに立っていたんだね。
「そしたら炎の中でうずくまる君がいた。僕の命なんてくだらないものだから、引き換えにして君を救おうと思った。でも君は…僕と同じ孤独を見ていた。」
あの時、この人が真っ暗で辛い孤独の中にいるだなんて
思いもしなかった。
強くて、周りに優しくできる人は
明るくてあたたかな環境で暮らしているんだと
無条件にそう思っていた。
でもあなたは
あんなに寂しい孤独の中で
私に優しさをくれたんだね。
本当に、あなたと言う人は__________。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
