あなたの名前は ページ31
“私は大丈夫よ…。だからあなたと妹で逃げて、お願い。私は本当に全然大丈夫だから。”
“大丈夫じゃない。”
さっきと同じように
この時も 彼は私の強がりを見抜いていた。
“大丈夫だってば…！”
“嘘だ。君は死ぬつもりなのかい。”
“私がいなくなっても何も変わらない。だからいいの。もう嫌なの…！”
“…嫌？”
“嫌だよ…こんな世界も、周りのみんなも全部嫌…！この社会を、世界を、誰かが変えてくれたらいいのに。”
“それなら…話は早いよ。”
私の言葉にお構いなく、
彼は再び私の手を引いた。
“_________僕が、君の目になろう。”
強引に引っ張られる手は
炎の隙間をくぐり抜けていく。
辺りは何も見えないのに
歩くべき道が不思議と分かった。
繋いだ手の温もりが私の心の中の何かを溶かして
真っ暗な視界が、段々と光を取り戻していく。
“この窓から逃げるんだ。”
そこには、私より少し背の高い
赤い髪の少年が立っていた。
“どうして…私なんかに。”
“…僕もこんな世界は大嫌いだ。でも僕と約束してほしい。君の望み通り、僕は君の妹を抱えて外に出る。だけど君も必ず、君の足でこの窓から出て外に逃げるんだ。”
“…いや……。”
“そしていつか僕に会いにくると、今僕に誓ってくれ。生きることを諦めないで。僕も君も1人だ。でも僕と君なら 1人じゃないんだ。”
早口で、力強くて
まっすぐ私に訴えかける声。
そうか__________
この声は。
“君が嫌った世界を壊すために、僕は生きる。”
今繋いでいる、この手の温もりは。
“そして_________僕はこの手で、世界を変える。”
あなたの___________。
「君があの日に嫌った世界を、僕は少しは変えられたかな。」
目の前で、ちょっぴり寂しそうにあなたが言った。
あの日見た少年と
同じ声で、同じ優しさで、同じ温もりの、あなたが。
「私…あなたと、あの時…。」
「…うん。そうだよ。」
“待って…あなた、名前は？”
燃え盛る炎の中で
私はあなたの名前を知った。
「じゃあ…あなたの、名前は。」
自分の心臓が鼓動する音だけが力強く響いて
一瞬、周りの音が全て消えた。
『僕の名前は』
視界がぐらりと大きく揺らぐ。
火の中で見た少年とあなたの影が、
不思議とダブって見えた。
そして今、私の記憶の中の声と
目の前の人の声が
とうとう一つに重なって__________。
『____________野坂悠馬だ。』
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
