スタジアム ページ23
「おはよう、起きて。」
「……んー…。」
うっすらと、目を開ける。
細かく揺れる身体
少しだけ痛む背中と腰
あぁ、そうだ
ここは飛行機の中で________。
「もうすぐ着陸だから、座席起こしてだって。」
「えっ…もう？」
「あなた、こんなに寝心地悪い座席なのに随分熟睡してたわね。もうこれで体調もばっちりかしら？」
寝ぼけた頭に、彼女の少しおどけた声がビンビンと入ってくる。
飛行機の窓から見える深い青が
私の目に容赦なく飛び込んだ。
「あ…はは。ちょっとだけ体痛いですけど、大丈夫です。」
ガタン、という強い振動が一度体に伝って
勢いよく大地を滑る車輪の音が足元から聞こえてくる。
こうして私たちは、ロシアに降り立った。
座ったまま上を見上げて、深く息を吸う。
________あと、少しだよ。
私とあなたの間にはもう
海の隔たりさえなくなったんだ。
「えっと…スタジアム行きのシャトルバスは3番乗り場だったかしら。」
手荷物を受け取ると、大崎さんは何やらぶつくさ言いながら私の車椅子を押した。
アメリカとは違う街の匂い、風の吹き方、聞こえてくる言語。
全てが新鮮で、全てに少し緊張した。
「もうちょっとで着くわよ。」
「…はい。」
バスの中は賑やかで
この人たちがみんな、彼らのサッカーに釘付けになるのかと思うと
何故だか少しだけ、誇らしい気分だった。
スタジアムに着くと、大崎さんは流暢な英語で受付の人と話をつけた。
流石にロシア語は喋れないらしいが、何とかなったようだ。
「すぐに出るなら私も入って良いって。よかったー。」
彼のくれたチケットは1枚だけだ。
だから大崎さんはスタジアム内で観戦することはできない。
車椅子を押して会場に入り、私を座席に座らせたらすぐに会場の外に出るとのことだった。
彼のくれたチケットの番号は私には見えない。どの席に行ったらいいかも分からない。
だけど、フィールドの緑だけは分かるよ。
ここがあなたの、輝く舞台なんだね。
「手繋いでるから、車椅子から降りて歩けるかしら。通路が細くて車椅子じゃ通れないの。」
彼女にそう言われて、ゆっくりと立ち上がる。
そして手を引かれながら、恐る恐る一歩を前に出す。
歩く練習をしていたとは言え、足元がぼやけるこの世界で歩くのは当たり前のように怖かった。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
