走れ ページ2
もう一度だけでいい。
手術の前に、彼に会いたい。
だってそう
この病気に、100パーセントがないってことを
私は知っているから。
彼がいつ病院を出たのかも知らないのに、
私は無我夢中で走った。
根拠もなく、彼に会えると信じていた。
走って、走って、
脚の力が入らなくなっても走って
「…………うっ…」
突如、地面の段差に足を取られて勢いよく転ぶ。
膝を擦りむいたのだろうか。
入院着のズボンに、真っ赤な血が滲んでいた。
「…もう！」
こんなところで転んでる場合じゃないんだ。
私はどうしても
彼に会いたいんだ。
立ち上がって、私は再び走り出す。
ズキンズキンと痛む膝も
久々の運動に悲鳴をあげる肺も
なぜだか 私を応援しているように思えた。
「……あ…」
遠くに、スーツケースを引く誰かの後ろ姿が小さく見える。
赤っぽい髪。
大きな背中。
堂々とした足取り。
あぁ___________
やっぱり
私とあなたは、奇跡だ。
「ま…って、」
朝の空気を、思い切り肺に吸い込む。
ねえ名無しくん。
私は遠く離れても、
こうしてまた 追いかけに行くから。
「待って！！！！」
そしてちゃんと、聞こえるように
あなたの名前を叫ぶからね。
彼の後ろ姿が、ぴたりと止まる。
もう少し、もう少しだ。
あなたに渡したいものがあるんだ。
彼はスーツケースから手を離した。
彼もまた、走っていた。
二人の距離が、
どんどん近くなっていく。
「………っ…」
言葉が交わされるよりも前に、
私たちの距離はゼロになった。
寂しい。怖い。離れたくない。
ただそれだけの思いで、初めて自分の手で彼を抱き締めた。
思っていたよりも大きな背中、
角張った骨格、
あなたの腕の中という幸せな場所。
この匂いが大好きだった。
この温度が大好きだった。
恋とか、愛とか、私はよく分からないけど。
とにかくあなたは私の感情の全てで
私の傷や過去を包んでくれて
私にとって なくてはならない存在で
そして、あなたはいつだって私の中枢であり続ける。
そう、あなたは私の_________
脳なんだ。
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やっさん(プロフ) - もちまる。さん» 素晴らしい内容です。夢主さん、良かったですね(^o^)v。しかし、人生の本当の勝負はこれからですぞ〜(^^) (2020年10月27日 20時) (
レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
一郎太と士郎が好きな者♪リン(プロフ) - 何か今更感溢れてるんですけど、完結おめでとうございます！(一年ぐらいたってるのにww) 私が占ツクを始めるきっかけとなったこの作品。 完成度が高くて、私もこんな作品を書けるような作者になりたいです！ ありがとうございました！！ (2020年4月22日 1時) (レス) id: e6fb3fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
きらら(プロフ) - やーだもう…青春…たまたま見つけて流れ読みしてきたら3時間前に完結してたんですけど…完結おめでとうございます！ (2020年3月30日 3時) (レス) id: 36a6836253 (このIDを非表示/違反報告)
shoto(プロフ) - もっと評価されるべき。最高。こんな最高な作品と夢主ちゃん、野坂君を書いてくれて本当にありがとうございます。 (2020年3月29日 22時) (レス) id: ef163209c8 (このIDを非表示/違反報告)
ユキウサギ - とても良かったです！！！！ 野坂さん最高ッス！！！！！！！！ (2020年2月27日 22時) (レス) id: ce069fbf80 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちまる。 | 作成日時：2019年4月27日 23時
