陸 始まりの地 ページ7
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目が覚めると、目の前には砂利があった。
地べたに寝た覚えはないがあちこち体が痛かった。
体を起こそうとしたが腕が動かなかった。
仕方なく首だけ動かすと、目に映ったのはたくさんの藤の花だった。
こんなに藤の花のが咲いているのだから、観賞用というわけではなさそうだ。
覚醒しきっていない頭でふと、そんなことを思った。
「やっと起きたか。何回起こしたと思ってんだ」
声のする方を向くと、膝をつきながらこちらを見下ろす人がいた。
揺すられている感覚などなかったが、いつから声をかけていたのだろうか。
『…あの此処は何処ですか? 俺、何も覚えていなくて…』
「……お前、まだ寝ぼけてるのか?」
心底呆れたといわんばかりにため息をつかれる。
一体何なんだ。
『そんなことより何で縛られてるんですか?』
縄を解こうと手探りで縄を引っ張った。
そういえば、袖を紐で括っていたんだった。
いや、そんなこと今はどうでもいいか。
「お前は今から裁判にかけられるんだよ」
『裁判? 罰せられるようなことをした覚えはありません』
「………本当に覚えていないのか?」
『はい、全く』
「…まぁいい。これから柱がいらっしゃるからな。いいか? 呉々も粗相のないようにしろよ」
そう言ってこの場から去っていった。
現状の説明が足りやしないかと思ったが、とりあえず縄を解こうともがいた。
「何だ? 鬼を狩るガキがいるというから来てみたが…随分と地味なガキじゃねぇか」
『!』
一瞬にして空気が変わった。
後ろを向くと、数名の剣士がこちらを見下ろすようにして立っていた。
『…柱の方々ですか?』
「見りゃわかるだろ。いちいち聞くな」
「あの、ちょっといいかしら」
随分と偉そうな物言いだと思ったが、隣にいた女性が縄を解いてくれた。
蝶の髪飾りをつけた綺麗な人だ。
『…ありがとう、ございます』
「手荒なことをしてごめんなさいね。傷の方は平気かしら?」
彼らの服装を見て驚いた。
あの日、兄が着ていたものと同じ服だったのだ。
『聞たいことがあります! 兄を、氷雨志郎をご存知ありませんか?』
「氷雨君? あなたもしかしてー」
「氷雨? …お前あいつの弟か。こんなやつが弟なんて、氷雨の奴もろくなもんじゃねぇな」
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S,JSB,K(プロフ) - K.yさん» コメントありがとうございます。今回は変更したい箇所が幾つもあったので作り直させていただきました。これからも更新しますので見ていただけると嬉しいです (2019年10月25日 3時) (レス) id: 192ee57338 (このIDを非表示/違反報告)
K.y - 前回読ませていただいたのですが、また書いていただけて嬉しいです。更新楽しみにしてます!! (2019年10月22日 5時) (レス) id: 19d59073e5 (このIDを非表示/違反報告)
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