参 百鬼夜行 ページ4
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何かの呻き声で目が覚めた。
いつもと違う空気に僅かな異臭。
慌てて飛び起きようにも、何かが覆い被さっていたためできなかった。
呻き声の主は母だった。
母の背中は血で濡れていて、背中の肉は抉れていた。
『お母さん…! …何で、何が起きた…?』
苦しむ母を抱き起こしたが、母はすでに虫の息だった。
混乱する頭で状況を把握しようと思考を巡らせていると、背後から何かが聞こえた。
恐る恐る振り返ると、己の身の丈の倍はあるであろう化け物が父を喰らっていた。
『…ひっ、!』
しまった。
そう思ったときには化け物がこちらを見ていた。
あぁ、次は自分の番だ。何故か他人事のように思った。
しかし、化け物の腕が振り下ろされるよりも早く、頚がはね飛ばされる。
わけもわからず辺りを見回せば、傍らに兄が立っていた。
兄が助けてくれたのだろうか。
すぐにでも兄に泣き縋りたかった。
しかし、それは憚られた。
目の前に立つ兄の姿はいつもと違っていた。
黒衣に身を包み、刀を握っていた。
その次に汲み取ることができたのは、計り知れない怒りだった。
こんなに怒っている兄は今まで一度も見たことがなかった。
しかし、その心とは裏腹に、兄はとても穏やかな顔を見せた。
「兄ちゃんが何とかしてやっから家ん中隠れてな」
頭を優しく撫でたあと、家を飛び出していった。
抱き抱えたままの母はすでに事切れていた。
駄目だ。兄まで死んでしまう。止めなくては。
そう思い、兄を追いかけ家を飛び出した。
飛び出した先はまさに地獄だった。
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S,JSB,K(プロフ) - K.yさん» コメントありがとうございます。今回は変更したい箇所が幾つもあったので作り直させていただきました。これからも更新しますので見ていただけると嬉しいです (2019年10月25日 3時) (レス) id: 192ee57338 (このIDを非表示/違反報告)
K.y - 前回読ませていただいたのですが、また書いていただけて嬉しいです。更新楽しみにしてます!! (2019年10月22日 5時) (レス) id: 19d59073e5 (このIDを非表示/違反報告)
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