拾弐 蝶屋敷 ページ13
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着いたのは大きな屋敷だった。
挨拶をして中に入る後藤さんのあとを追いかける。
庭には数匹の蝶が飛んでいて、少し空気が澄んでいるように感じた。
『此処は?』
「蝶屋敷だ。
出払っているのか。人の気配を感じない。
室内を探してみた方がいいだろうか。
「あぁ!」
『うわぁ!?』
「貴方姉さんが言ってた子ね。こんなに怪我してるのにどうしてすぐに来なかったの!」
『だから怪我はして……ん?』
振り返った先にいたのは、蝶の髪飾りをつけた女性だった。
『さっき会いましたよね? …いや、もっと優しかったような…』
「私が優しくないって言いたいの!?」
目の前の女性は怒り声を上げた。
踵を返し、怒りながら屋敷の中に入っていく彼女のあとを追った。
「ちょ、離れろよ。俺関係ない…」
『…もしかして屋敷にいた人じゃない?』
「私は胡蝶しのぶ。姉さん、胡蝶カナエの妹よ」
『胡蝶は何をしてる人?』
「いきなり呼び捨てにするなんて失礼な子ね!」
『年、同じくらいかと…』
「貴方幾つなの?」
『12です』
「私より年下じゃない!」
『ごめんなさい…!』
「だから離れろって!」
胡蝶がひとつの部屋の前で止まる。中は個室だった。
中を覗こうとしたら、怒りながら着替えを押しつけられた。
「いい? ちゃんと休ませなさいって姉さんに言われてるの。絶対に部屋から出ないこと!」
念を押され、部屋に入れられる。
この様子だと外で見張っているかもしれない。
大人しく着替えよう。
そう思い、服に手をかけると兄から貰った御守りがないことに気づいた。
『…何で、ちゃんとあったのに!』
さっきまでいた屋敷か。此処に来るまでに落としたのかもしれない。
それとも爺様の家か。
爺様の家といえば、何故自分はこんなところにいるんだろう。
何も思い出せない。
御守りのことどころか此処に来るまで何をしていたのか。
それに兄が死んだのはいつだ?
つい最近まで文通をしていたじゃないか。
考えたってわからない。
もう寝よう。何も考えたくない。
服もそのままにベットに寝転ぶ。
『……兄ちゃん…』
会いたい。全部夢だったらいいのに。
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S,JSB,K(プロフ) - K.yさん» コメントありがとうございます。今回は変更したい箇所が幾つもあったので作り直させていただきました。これからも更新しますので見ていただけると嬉しいです (2019年10月25日 3時) (レス) id: 192ee57338 (このIDを非表示/違反報告)
K.y - 前回読ませていただいたのですが、また書いていただけて嬉しいです。更新楽しみにしてます!! (2019年10月22日 5時) (レス) id: 19d59073e5 (このIDを非表示/違反報告)
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