バイト ページ3
「桜木君。もう降りていいよ。」
もうやだな。やめようかな。
でも、ここは結構コスパ良いし給料高いから辞めるわけにはいかない。
最近失敗ばっかりして、みんなに迷惑かけて、虐められて、最悪だな。
何か目の奥熱くなってきた。ひっこめ。涙。
早く帰ろう。そう思いながらダッシュで家に帰る。
俺はかっこいいことできるわけでもないし、超絶いけめんとかじゃない。
かと言って可愛いかって言われたら違う。
背も高くもなく低くもないっていうビミョーだし、うん。って感じ。
勉強ができるわけでもない。スポーツや運動ができるわけでもない。
マシなのは……ゲームぐらい。
って。俺体力無かったじゃん。
気が付いた時には遅くて、のどがヒリヒリして、肩で息をしていた。
「わっ」
と聞き覚えのない人の声が。
その声の主は俺より背が低かった。
その人は、俺の顔を覗き込んで「あれ？びっくりしてなくない？」などと言った。
誰だよお前。そう思いつつも心臓がバクバクしているのを感じ、びっくりしすぎて声が出なかった。という風に思った。
「え、僕見たことない……？」
あ、そうだ。思い出した。バイト仲間の青野論だ。
皆からはころんとか呼ばれてたっけ……
こいつは俺とは違ってふざけたりわぁわぁするタイプの奴だ。
正直、一番関わりたくなかったのだが。
『青野……さん？』
そういったころんは、長いまつげをパチパチさせ、びっくりした様子だったが、すぐに体勢を立て直した。
「そーだよ！桜木君！」
ニコっと笑った顔は可愛くて、俺も自然とへにゃっと笑顔になった。
ころんはまた、ちょっとびっくりしたような顔になった。
『…ぁ…の。』
「？どしたの。」
『っ………』
気が付くとさっき我慢していたものが頬を伝っていくのが分かった。
心配させちゃうじゃん。また。
何で、俺、こんなことで心配させたくない…よ……
どうしたの。
そんな言葉をかけてもらった。
他の人にはそんな言葉かけてもらったことがない
……と言えば嘘になる。
かけてもらったことがない。
……というよりはかけられすぎた。
もう、泣き虫で終わらせたくなんかない。
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作成日時：2020年9月16日 17時
