第72話 ページ28
ジェイドside
フロイドと僕は実は昔Aさんに会った事があります
もう向こうは覚えていないようですが、僕らは今でも覚え続けています
あれは僕らがまだミドルスクールの最年長の学年だった時の話だと思います
珊瑚の海で泳いでいる時に、誰かの綺麗な歌声が聞こえてきたんです
誰だろうねとフロイドと話して、声の方へ行くと黒い髪の少年が1人で歌っているのが見えました
非常に気分が良さそうで、楽しそうで、歌っている事を純粋に楽しんでいるようでした
僕達は彼が歌い終わった後、感動と称賛の意から彼に拍手を送っていました
えぇ、彼に近付いて、水面から顔を出して彼と初めて目を合わせて話したのはその時です
すごいねと、歌が上手いですねと、そして非常に感動したと素直な感想を伝えて、彼はそれに喜んでいるように思えました
楽しそうだったんです、そして僕らの率直な感想を受け止めて素直に喜んでくださっていたんです
少年らしい、可愛げのある顔で笑っていました
そこで少しだけ色々な話をしたのですが、彼には帰るべき場所、そして帰らなければならない相手がいたのです
そこで話の途中で彼は「行かなくちゃ」と言って笑って去って行きました
まぁこれだけを切り取れば別に何て事のない綺麗な思い出で済んだんです
でもその後フロイドが彼の事を思い出しては、「また会えないかな」と少し残念そうな顔をしているのを見て、僕もどうにかできないかと感じていました
事実僕自身ももう一度会いたいとは思っていましたが
そして少し経ってから、彼はとある雑誌でモデルを務めていて、それを見て僕は「これは彼で間違いない」と思ってフロイドの元に持っていったんです
フロイド「ジェイドぉ、ありがとう」
フロイドが笑っているのを見て、僕はフロイドを癒す事ができて良かったなと感じました
しかし僕自身もAさんには興味がありますし、フロイドが「現物も欲しいね」と言っていたので、アズールに「真っ当な手段で彼を手に入れるにはどうしたら良いか」と聞けば、アズールはこう答えました
アズール「こういう芸能の世界において彼らはプロデューサーの金儲けの手段として誰かに所有されているんです
どこかの誰かが彼を「売り物」として所有しているんですよ
俗に言う「雇用契約」と言うものですね」
僕はそれを聞き、契約という手段でこちらが奪ってしまえば良いと考えたんです
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作者名：ユウ | 作成日時：2020年12月25日 22時
