The invisible story 2 (ページ21)

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第65話ページ21

フロイド「美味しい？」

『…』

そう言われてちゃんと咀嚼する

うん、確かに美味しい

美味しいけど何なのか分からない

何でこんな状況なの僕は

フロイド「気に入らなかった？」

『…いえ…美味しい、です』

フロイド「そっかぁ

なら良かったぁ」

なんかこの人めちゃくちゃ嬉しそうに笑ってるし

何なんだこの人は

何て言うか、少し子供みたいに見える

いや、僕の子供って話じゃなくて、世間一般の子供ね

フロイド「続きぃ」

『…いえ、あの…』

フロイド「うん？」

『…自分のペースで食べて良いですか…？』

いや、よく言ったな、僕

僕この流れによく流されないで言いたい事を言えたなと思う

絶対機嫌取らないと面倒な相手でしょ、ここにいる人達全員

そういう風に人を見た目で判断すべきでないにせよ、隠し切れない何かが伝わってくるし

だいたい人にまともな説明もしないで料理運んできて、ましてや口に無理矢理突っ込むような無遠慮な相手に信用も信頼もないだろ、普通は

でも何かここにいる人達僕がいる事でものすごい嬉しそうな笑顔してるし、何か目的はきっとあるんだろうけど僕を敵として見ているのとも違うのだとは伝わってくる

にしてもこれは新手の拷問か？

何で人に物食わされているのかも分からなければ、この「逃す気はない」的な非常に近い距離で大きな身体の男に囲まれているのも異様な光景が過ぎるのだ

何て言うか、本能的に逃げたい

逃げたいけど逃げても多分碌な事は起きないんだろうなと大人しくしていようとする思考が同時に働く

まぁこれ食べるだけならまだ良しとするか

それ以上の要求が来たらその時考えよう

なんて、少し現実逃避する

フロイド「そ？ならこれあげるねぇ

ゆっくり食べて良いよぉ」

そう言われて先程僕の口に突っ込んでいたフォークを渡される

手袋越しの手に僕はそれを受け取って(いや僕も黒手袋は普段しているんだけど)、素直に目の前で艶と湯気を出しているパスタにありつくかと思考は転換していく

『…もぐ…』

フロイド「一口がちっせぇの～

でももぐもぐしてて可愛い」

『…ッ…』

いや、そこは頼むから黙ってて

あとあまりじっと見ないで

逆に食べづらい

フロイド「食後にケーキもあるからねぇ

リラックスして過ごしてよぉ」

『…うぐ…』

色々マジかと思いつつ、僕は緊張を解けないままとりあえずは与えられたパスタを食べ続けていた