第312話 ページ32
零side
零「…さて、一郎に計画が潰されちまったし、俺も大人しくしてるか
余計な事で一郎の邪魔して一郎不幸にする気もないしね
お互いのために自分が止まっておく事も大事だろ？
そうやって一定の距離を置いておくのも大事だって俺は学んでるよ
嬢ちゃんも、俺と同じように、時に真面目に時にふざけて少し狡賢く生きていけると良いね
うまく生きるって多分そういう事だよ
ずっと真面目にやろうとしてちゃあ疲れちまう
そういうのができる強い奴もいるけど、そういうのってどこまで行っても自分の追い求める理想が高くていつまでも願いは叶わないんだ
そうやって人生に制御をつけて自分を高める奴もいるが…俺は真似できないね
何せ自由が奪われるのは嫌いだし」
そう言って俺は嬢ちゃんの側から離れて、玉座に向かう
零「…いずれ一郎が俺を認めてくれる時まで俺はここで待ってるよ
冠をもらいに来る気になったら来てね
それまでは俺も生きているから」
ここにいない一郎にそう言って、俺は移動のために宙を舞う
この箱庭が一望できる、一番高い玉座のある場所に向かって
零「…箱庭ってのは標本みたいに思えるね
でも守りたいものはこうやって閉じ込めておきたいのが俺の性でねぇ…
他の魔族にそれを規制してる俺がこんな事してるって知ったらそりゃ嫌われるか、誰しも自由を誰かに与えられてるなんて思いたくないだろうし」
世界を俺が捉えている姿のまま言いつつ、少し下界の様子を伺う
玉座の隣にある、下の世界が見える水晶玉に目をやって
零「…ここにいる俺らがこの世界に何らかの影響を与えているのは事実だ
お前らが俺らを求めていても、どんなに大切にしたいって思っていても、俺らはきっと願いを叶えてやれない
…俺らの作った世界でお前さん達を不幸にしているのが本当の所なんだから」
俺はこの世界の全命あるものに向けてそう言う
俺が神様な訳ではないが、大きく世界を動かすに至った俺ら種族を代表するようにして
零「…それでも俺らに付き合ってくれるってんなら、報いはするよ
俺の心臓はこの世界の融和のために」
そう独り言ちて、俺はいかにも王様然に振る舞って玉座に座り込んで世界の観測を続けていた
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作者名：ユウ | 作成日時：2020年12月19日 19時
