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第170話ページ25

俺らを置いて去っていく碧棺左馬刻を俺は見やる

俺の視界に映る碧棺左馬刻の表情は何だか苦しそうで－－－－

『…っ…俺、碧棺左馬刻に…あんな顔させたかったわけじゃ…ないのに…っ…』

俺はつい本心を山田一郎の前でこぼす

涙が溢れて止まらない

今だけは誰かにそばにいてほしい

一「おい、大丈夫か…？」

山田一郎は俺に寄り添うように優しく背中を撫でてくれる

一「…お前の言いたい事分かるぞ

お前、左馬刻の事認めてるし左馬刻の言いたい事だって分かってんだろ？

でもお前は優しいから左馬刻だけを応援して俺らが負けちまうのを肯定するのが辛いんだよな？

お前の言いたい事は間違ってねぇよ

…だからそんな泣くな」

山田一郎はどうして俺の思っている事を分かっているのだろう

俺が優しいかはともかく、山田一郎の言っている事は全て俺の思っている事と同じだ

こんなに分かってくれるなんて俺は誰を頼りにして生きていけば良いんだ？

俺の理想は碧棺左馬刻の理想とぶつかり合ってしまうのか－－－－？

一「…お前、「公平なものは世の中に存在しない」って思った事あるか？」

『…思った事…ある…

…つい、さっきも…そう思った…』

一「そうか…これ、あいつがいつも言ってる事なんだ

あいつ、この世には公平なものは絶対存在しないっていつも思い込んで生きてるんだ

…でも俺はそうは思わない

きっと、誰にとっても正しい未来だってきっと作れると思うんだ

だから俺、左馬刻の目を覚まさせてやりてぇんだ

ルークもそれ応援してくれねぇか？」

俺はそう言われ迷ってしまう

山田一郎の思い描く未来は俺が抱いてる理想と限りなく形が近い

でも碧棺左馬刻の抱いている考えは俺にはよく理解できてしまう

公平はこの世の中に存在しない

人の心だっていつも矛盾を孕んでいる

その事を今日1日で改めて理解した

だから俺は山田一郎を素直には応援できない

たとえ理想だとしても、その理想を叶えるために戦うとしても、それが現実不可能な事を知ってしまってはいるから

『…俺には応援はできない…

…でも、お前らのどっちが正しいのか俺に教えてほしい

…俺にはどっちの意見も理解できるから…』

そう言うと山田一郎は少し困ったように笑って「任せとけ」と言ってくれた