ウチとアンタと、キミの言の葉9 (ページ44)

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第366話ページ44

気を許した、って言ったら何となくそれは違う気がする

だけど言の葉に当て嵌めるんやったら「自分を譲った」、その表現が正しい

自分との距離を近付けることは認めて、だからといって全部自分というものを明け渡した訳やないままに、ただ相手の好きなようにさせてウチは何も言わない

もう好きにすればええよ、なんて一種の諦めの心を抱いたんは事実で、だからといってネガティブな言葉でそれを表現するんとは違う

難しい心を一言に表現するんは無理やけど、例えるなら「何かに、あるいはどこかに落っこちた」感じだけはしている

自分を導いていく存在なんて自分以外に誰もいないのに、その導き手をウチで見失ってもうこの場に滞留せざるを得ない

『…』

簓「…A、今までごめんな

だけどこれで終わりにしたるから、この我儘だけは聞いてや

帰ろう、どこにも行かんと俺の側におって」

簓は本当に自由身勝手にそんな事を言いよる

自分を導いて救える人間なんて自分以外に誰もおらんのに、その自分を失って生きられる程にウチは強くはない

だから勝手にウチを殺さんで欲しい

だけどなら誰かに自分を分かってもらいたいだなんて別に思ってもいないし、自分を他人に譲り渡す事なんか出来ない

他の誰もが持っていない「自分」という唯一無二のものを、ウチは誰かと「同じ」として消費されたいと思えない

それを失えばウチは何もなくなるんやから、分からないままで別にええんよ

だけどそない心を分かるのも結局ウチ以外誰もいない

結局人間、1人では「自分」なんていう重たい存在を抱え込む真似なんてできなくて、誰かに自分を譲っていないと生き延びる事なんかできないんや

だからせや、ユウちゃんやないけど「半分」だけでええ

半分だけでええからウチを抱えて、ウチの半分はウチで持ったままにしておきたい

相手が兄貴であれ何であれ、「半分」ならウチを譲れる

『…しゃあないな

ホンマ、こない兄妹辞めさせてもらいたいわ』

簓「…コンビ組んどる芸人みたいな事言わんといてや

そない簡単に兄妹言うんは辞められへんやん、言うんなら俺やのうてオトンとオカンに言うてな」

『正論言わんでええんよ

シラけるわ』

簓「…でも、おおきにな

一緒にいるって言うてくれて」

『…』

結局ウチは「絆される」言う言葉のよう似合うような選択肢をウチで決めて、もうその選択をしたウチの事を振り返るのも止めにする事に決めていた