第365話 ページ43
『…ダメやのうて、ウチが嫌なん
ウチが何のために死んだんか分からんくなるやん』
簓「…なら、まだ生きてや
生きて、一緒に歩いて、その答えの正体をまだ見つけないままでおってよ
そもそも生きるのが嫌になった訳と違うんやろ?飴村乱数に殺されて死んだ言うだけの話で」
『…』
簓「な、絶対に今度は俺でお前の事守ったる
何があっても、誰にも奪われへんように真っ先にお前に追いついて庇ったる
だから自分を捨てる真似はもうせぇへんと、俺に大人しく守られてや」
『…いらんわ
ウチはウチで面倒見切れるし、ウチがウチを捨てる真似した覚えだってあらへん
ウチかてもう22の大人なんよ、ウチの事くらいウチで決める』
簓「お前は大人になるんが俺よりも早いんよ
俺の方が歳は上なんに」
『…知らんわ
勝手に先に生まれただけやんな』
簓「なぁAちゃん、俺らって兄妹やよね?」
『…』
簓「…兄妹ってこない冷めたもんと違うやろ
一緒に補い合って、一緒に成長していって、同じように世界を見るようになるんが兄妹なんと違うんの?
どっちかが犠牲になるなんて健全やないやん」
それを言うんなら簓やって同じやん、って言いたいんに簓の顔を見て何も言えなくなる
あの日ウチが見たのと同じ、何かを堪えているような悲しそうな目つき
言葉を言えなくなる人間の典型例
何かウチが相手から言葉を奪っていると分かる目をされて、罪の意識を抱けへん程ウチも冷酷にはなれない
それが分かるから、ウチも何も言えへんし黙る
そない自分を救う相手がどこにもおらんから、きっとウチは簓を守るなんて言うて本音では自分を守りたい事を隠し通してずっこい生き方を今までしとるんや
何のために生まれて、何のために生きるのか
何も分からなくて転落していくような心地だけがウチを支配していく
『…』
簓「…Aちゃん、一緒に行こう
今度は俺も間違えたりせぇへんから、Aちゃんも間違いを起こさんで
1人で生きるなんて悲しい事言わんでや、いつまでも俺が子供やって言われてええから俺にお前を温めさせて」
簓にそない言われて、転落した思考が元に戻る訳でもないままにウチは抵抗する術を失って黙ったまま自分を簓に明け渡す事を許していた
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年9月5日 20時