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第362話 ページ40

簓「…Aちゃん、俺色々言いたい事あるん

でもその前に、いっぺんお前の事腕に抱かして」


ウチの許容も聞かんと、簓は勝手にウチの事腕に抱きしめる


簓「…今までおおきに

俺の事守ってくれとったんやろ?昔オカンがいなくなってまった時から」


そない1人で勝手にものを言いよる


『…って…

…ホンマに何の話しとるんの?何でこない事でオカンの話が出てくるねん』


簓「知っとるんよ、あの日から俺はAがホンマに笑てる所見た覚えないもん

俺が泣いたから、お前は表情奪われて泣けへんかったんやろ?

泣いてええで、今度は俺がお前守ったる番や」


簓は柔らかくウチを抱きこんで、いつもと違う拘束力に欠ける腕でウチを包み込む


鈍い温度と少し男の香りが混ざった爽やかな匂いが混ざって、どこかこの男はウチの知らん所で勝手に大人になっとるんやなっていつだったかにウチが考えた「ごく当然の感性」を呼び起こしていく


簓「Aちゃん、今からでもいっぱい色々やろう?

日本は今H暦4年の2月なんねん、簓君Aちゃんからのバレンタインデー欲しいねん」


『…一度もやった事あらんやろ

マシュマロでも送りつけたろか』


簓「そんなに俺の事嫌いなん?

前テレビの収録でスタッフに聞いたで、マシュマロは苦手な相手に贈るお菓子の定番なんやって」


『…』


簓「…ショックやよ、妹に好かれへんのは」


簓はホンマにショックを受けとるような、ウチの苦手な捨て犬みたいな顔で一瞬だけウチを見つめよる


簓「それから、桃の節句も近いやろ?

お前のお祝いは今までにないくらい盛大にやろや、盧笙も呼んで昔みたいに粉もんでも食べよや」


『…ウチの生誕なんて祝う事でもないやん

ただの平日なんねんから』


簓「端午の節句は祝日なんに変な話やよな

お前の生まれ国が目一杯祝ったってええやん」


『…

中王区に祝われるくらいなんやったら祝ってもらわん方がええわ』


簓「…まぁせやな、俺らは俺らで祝えばええわ

正論やよ」


色々簓に言われるけど、ウチも簡単には変われない


何のためにウチが死んだのか、その意味がウチで分からんくなるのが嫌やから


『…ちゅーかウチは帰るなんて一言も言うてへん

帰るんやったら1人で勝手に帰り

盧笙呼んで勝手に騒ぐんはウチの知らん所で勝手にやればええよ、ウチには関係ない』


簓「…」


そう言うと簓はウチを腕に抱き込んだまま、何かまた覚悟の決まったような顔をしてウチに笑顔を向けていた

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作者名:ユウ | 作成日時:2021年9月5日 20時

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