ウチとアンタと、キミの言の葉9 (ページ35)

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第357話ページ35

クルーウェル「…個人的な感情はどうでも良い

お前が妹を引き連れて帰るなら止める道理は俺の中にもとりわけない」

話を続ける感じ、きっとワンダーランドの住人も日本と同じように他人事は他人の箱庭の話やって流す癖があるんやと思う

どの世界も基本的な原理は似とるな、なんて自分とは違う世界に生きる者を見て思う

クルーウェル「…だが一つ断りを入れておく

帰る道は分かっているのか？」

簓「…来た道も自分であまりよう覚えてへんねよ

せやから帰り方は聞かんと分からんな」

クルーウェル「お前達はそういう所まで似ているのか

ハァ…まぁそれはどうで良い、だが帰れるかは仔犬自身の命が繋がってからだ

無茶をするなとあれほど言ったのに、聞かずに生徒を庇って自らその命をかなぐり捨てるなど教職員の俺が何を言ってやれば良いのか分からないな」

兄ちゃんは静かに溜息を吐いて、ある事情を俺に聞かせてくれる

クルーウェル「半年ほど前に、その仔犬が少しある事件に巻き込まれた事があるんだ

その時に忠告を入れたが、そいつの命は生命の灯火が本当に弱い、今まで顕著してきた事が奇跡以外の何者でもない程にな」

簓「…やっぱりAは死ぬしかないん？

ここまで迎えに来たって言うんに…」

クルーウェル「話は最後まで聞け

忠告を入れたと言っただろう、余計な真似をしなければ生き延びれる手立ては存在すると伝えたんだ

だが仔犬は「選ばない」、という選択肢をとった

元の世界では既に死人だから死ぬのを厭わないと言ってな」

その話を聞いて、Aが自分の事を何か勘違いしとる事が読める

ホンマは生きとるんに、自分は死んだってあの日の事をきっと腑に落として前を向いとるんやと思う

クルーウェル「…その仔犬の命を繋げるのに必要なのは、どこかしらとの「縁(えにし)」を繋いで刻む事だ

本来の肉体から離れた故に自分の生命を見れなくなったゴースト達と同様に、そいつにはこの世界における命はそもそもが「存在していない」はずなのに無理矢理に今までを生きていた

そしていざ死ぬ程の重傷を負って、今は時間との戦いだという状況に陥っている」

簓「…」

クルーウェル「…お前達2人の帰る道の確保はしてやる

その前にお前はその仔犬を守る気でいるなら自分でどうにかするんだ」

そない言うて兄ちゃんは俺にAを託して、機械仕掛けの兄ちゃんと一緒に部屋を出て行っていた