第343話 ページ21
いざ自分の事を存在として証明しようと思うと結構難しい事やななんて思う
職業柄自己紹介には慣れとるけど、何もあらへん自分を「何かがある」って思い込ませるのには時間がかかる
同じ年月を共にするか、あるいは想像力で補完する以外に方法なんかない
簓「…俺の名前、白膠木簓って言うんや
H暦4年の日本から来とる」
アズール「…!」
簓「…年明けてもうたから1年はいかへんけどだいたいそこらの再会になるんよな、妹とは」
そない言葉で初めて自分の持っているものを証明する
自分の生きた世界、自分という存在の持つ肩書き、色々あるけど「自分」というものを表面的に存在させるための言の葉で自分を世界に成り立たせる
アズール「…齢は26歳…」
簓「4個違いなんよ、妹とは」
アズール「…」
簓「ほんで俺は日本でお笑い芸人やっとる
そない仕事ここにはあらんの?人笑かして金稼ぐ仕事や」
違和感があるのか、他の兄ちゃんらに微妙に俺の言の葉は突き刺さらない
言葉って言うんは軌道に乗せて自分の意思を発揮していかへんと何の力もない存在で以外ないなんて感じる
ジェイド「…知らない仕事ですね
そのような仕事に需要があるのですか?」
簓「…俺の世界ではな
ここにはあらんの?」
監督生「ジェイド先輩!そんな言い方はダメです!
お笑い芸人は簡単になれる仕事じゃないんですよ!」
ジェイド「…おや…?」
監督生「お笑い芸人って言うのは人の心を掴む巧みな話術と繊細な心の動きに敏感になる事が必要な仕事です!
唯のいい加減な人間のなれる仕事じゃありません、需要がどうとかで片付けてはいけないんですっ!
私も良くバラエティ番組ですごいなって思うんですからっ!」
時折お嬢ちゃんが俺に味方してくれて、それで俺も少し話がしやすくなったりする
世界の前提がそもそも違う時、自分という存在は常に本来は弱いものやって感じたりする
ジェイド「…成る程
監督生さんの話が本当の事であるとするなら、彼女のあの巧みな話術にも説明がつきますね」
簓「…!」
フロイド「環境がそうさせてたんだね
移っちゃってたんだ、自分にそのつもりがなくても」
背の高い兄ちゃんは「はぁーあ」なんてため息をついて、まるで何か力の抜けたような顔をしてはった
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年9月5日 20時