キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ49)

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第142話ページ49

ダニエル「…？」

俺の認識ではその「すごい」と呼ばれる男は「普通」の域から外れない男だと思っていた

だって俺らは何でこんな学校にいるかって、それ相応に音楽を今までやってるものだろと思っているから

音楽と無縁の奴がこの学園に紛れる事はない

『…それホンマに？ほんならセンセはどうして異端みたいな扱い受けるんの？』

ダニエル「子供の頃にお坊ちゃん達のお遊戯でやってる音楽と「音楽を極める」って事とは意味合いがまるで違うからさ

「学問」として音楽を極めて自分のものにするってのは単に楽しけりゃ良い訳じゃねぇ、誰もにとって「音楽とはすなわちこうだ」って自分で示す事ができるようにならなきゃ「本物」って呼ばれない

逆に言えば単にお遊びで音楽やりたい連中に向けた学園って訳じゃないのよ」

『…成る程なぁ

つまり「プロに仕立て上げるための環境」っちゅー訳な

なんか、ちょっと大学みたいやな』

ダニエル「専門性を極めるって意味合いじゃ似てるね

まぁ、ガキの癖して若干頭のおかしな連中やら偏った人間が生まれていくのは否定のしようもねぇが」

『…そない子供の頃から自分の視界狭い世界におったらそないなるんも頷ける気はするで』

ダニエル「まぁ、でも逆に「本物になりたい」って奴からすれば良い特訓になる場所でもあるのよ

何せ音楽やるからには真剣に教師は俺らを育てるし、俺らが将来苦労しないためにって名目でガキの頃から演奏会やらどこかのお偉いさんの前での音楽の発表やらの機会をどんどん設ける」

『…うげぇ…場慣れして鍛える方式なん？

なんか、ちょっと力技の部分もあるんやね』

ダニエル「ハハッ、確かに力技かもな

普通の音楽学校の風土は俺にも分からねぇ、けどまぁ音楽やるからにはガキの頃から鍛えておかなきゃならねぇって感性は大人になった今にしみじみ分かるね

早く大成したけりゃ早く手を打てって言うそう言う意味合いで俺らに厳しく当たってるんだよ、あの教師陣は」

『…ほんならセンセもそのセンセから自分の価値に影響及ぼされとるん？』

ダニエル「そこなんだよ、俺が目をつけたのは」

『おん？』

俺がアオイに目をつけているのは、「誰にも曲げられる事なく自分の音楽をいつでも奏でるその姿勢」

自分に自信がある訳でもないのに、真っ直ぐで嘘を言わない、「余計な着飾り」のないその男のピアノと人間性に俺は惹かれて声をかける事になったんだって思える－－－－