第138話 ページ45
その俺達が出会うまでの過程は短いようで実は少し間がある
当時のアオイは俺らからしてみると「異国人」なだけあって無条件に偏見で見られる
肌はアジア人特有の色で、髪の色はブロンズでもグレーでもない黒
アオイは1人自分で異国の世界へ迷い込んで来たのに、偏見が理由でいつも1人きりで過ごすような事を余儀なくされる運命にある
生徒1「あいついっつも1人で喋らないで黙ってる地味な奴だよな
どこの凡才の生まれだ?」
生徒2「髪黒いし変な奴
自分の才能に余程自信でもあるのかな?所詮自分の才能を勘違いしてる野郎の1人だろ?」
生徒3「アジア人なんだろ?あいつ
あまり近付かない方が良いぜ、変なのが写る」
ちなみに言うなら俺達の中には「本物」と「本物と自分を豪語する偽物」が寄り集まっている
才能のある音楽家の家庭で生まれたから、あるいは自分に才能があるとどこかの誰かに言われたからそれを信じて、理由は色々あるけどここにいる奴は変に自分の才能に自信のある誇りだけは人一倍高い馬鹿な人間が多くいた
それをこれから篩にかけられていって、そこで生き延びる奴だけが本当の意味で「音楽家」を名乗れるって話な訳で
教師「…お前達、ここで何をやっている?」
生徒1「え?普通に友達とお喋りしてるんだけど何で?」
教師「ほう、お喋りができるとは随分余裕なようだな
殆どの生徒は明日の試験に向けて寮に帰って自主学習をしているが?」
生徒2「先生、頭かたーい」
日本の自由で生暖かい教育を知ってる奴らにはきっと想像もつけられないだろう
俺らの学校は全寮制の男子学生しかいない中高一貫の音楽校
そして門限が決められていて、その守衛を果たす門番は銃を片手に常に握っている
『…え、生徒撃つんの?
「出るな」って常に構えとるん?』
ダニエル「守衛さんは厳しくてねぇ、外出の許可がないと学園の外には出してもらえないんだよ
そういう学校なの」
『…えぇ…』
葵「…単にウィーンは日本と比較して治安が悪いから生徒を守るための仕組みだ
本当に守衛が銃を撃っている所は俺も見た経験はない」
『…何や、それならええけど
でも、ウチの全然知らん世界やね』
ダニエル「こんな平和な日本じゃ想像もつかないだろうね
俺達の学校、音楽の世界じゃ「ウィーンのアウシュビッツ」なんて皮肉られてるんだぜ?」
『…え…?』
ダニエル「…俺らは厳しく育てられるんだ
「本物」に本当になるために」
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年10月17日 18時