キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ44)

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第137話ページ44

ある種優しい言葉ってのは「洗脳」に近い

そういう言葉に懐柔されていくから人は皆道を踏み間違える

そして眠った自我が再び目を覚ましていくその日まで、自分が感じているものが何なのかを本当の意味合いでは理解しきれない

ただ誰かに与えられた「何か」を「自分の受け取っているもの」だと誤認して、「それ」が仮に自分を痛めつける材料になったとしても「それが自分を成り立たせるものだから」って嘘でも言う事を聞いて信じちまう

だから音楽も言葉もある種「毒」だ

その毒を啜って自分の腑に落とすまで、その恐ろしさに誰も気付かない

子供のダニエル「…？」

俺はそういう意味においては騙されにくい、ある種明確に「自分」が定まっている側の人間だから人からの搾取の被害は受けにくい

その俺が搾取されているかについては「されているとは言えるが主導権は俺の側」だと言える

アオイと俺はそこが多分反対で、そこに個性の差が出る

他に言うならアオイが姉ちゃんに追い出される生き方をしているなら、俺は妹を自分の側に引き込んだ人間

俺がヴィオラをやるのは予定通りの事で、そこに自分の妹が組み込まれる事になるのもある種決まりきっていた事ではあるが、音楽の道に妹を引き摺り込んだのは他でもない俺でもある

でもその妹は搾取とは違う感性、所謂「憧れ」でヴァイオリンを選んで、その割には結果として俺より上を行っちまった「強い」人間だ

ついでに余談を入れるなら俺の家も家庭には恵まれて、母さんも父さんも人柄の良い大らかでドイツ人らしい親だ

そんな父さんと母さんは実の子を人一倍誰より愛して、生まれた子供に「いつか一緒に音楽を演奏してくれれば」なんて夢と期待を抱いて俺ら2人を同時に同様の愛で育てていた

そんな俺らがその期待に答えたのは当然とも言える事で、自分達から「母さんと父さんと演奏したい」って言って育ったのが俺らの家だ

根から仕組みの違う、見かけ上差をつけられない「起きてる現象自体同じに見える別の事柄」がこういう風に際立って来るのは、その後の未来で本当にアオイが「壊れる」からだ

それを支えているのが今の俺って訳で

子供の葵「…」

子供のダニエル「…何だ？

黒い髪にここらじゃ見かけない顔立ち…そのくせ全然笑わない

何か「別」の奴が学園に混じってるな」

アオイは結果として自分の慣れない環境に踏み込む

そしてそこで、運命の巡り合わせで俺と出会うきっかけにも当然巡り会う