キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ39)

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第132話ページ39

ピアノに触れた瞬間に、アオイは「音が全部自分で掴める感覚を覚えた」そうだ

訳の分からない事を言っているように聞こえるだろうが、才能って言うのは「そういうもの」として分かる以外にないものだ

実際こいつの弾くピアノを聞けば言いたい事も伝わる

こいつの凄い所は後にも言うが暗譜の才能と「目隠しをしてもピアノが弾ける」、本当に音を掴める天才だっつー所だ

まぁそれは後の話として置いておいて、その才能に目覚めちまったアオイはその日当然「覚醒」の日を迎える

子供の葵「…」

その目覚めが幸福でいられるうちは当然本人も他の誰かも幸せだろうが、残念な事にその後のアオイの人生はそれがきっかけで「狂い」の方向に向かった

才能を開花させてその事に自分で気付いただけなら何の問題もないが、それを見抜いたのは本人だけじゃない

葵の祖母「…！」

アオイの凄い所のその2個目は、誰も何も言っちゃいねぇのに自分でピアノが弾けちまった事

楽譜も与えられていない、何も今までピアノに縁もゆかりもないアオイは「自分だけが今知っている自分だけの音楽」をその日語るように自分で弾いた

アオイは生まれながらにして、そういった「音楽者として成立する表現力」、あるいは「音楽家」としての天性の才能は確かに持ち合わせていた

少なくともその日のアオイは「作曲家」としての技能を十分に発揮していただろう

そしてそんな「音楽」に纏わる才能は、他人を驚かせるのに十分なエネルギーを秘めていた

葵の祖父「…葵がピアノを習ってるなんて聞いてるか？」

葵の祖母「…いいえ、聞いてないわ

多分この子は持って生まれたのよ、「天から恵まれた才能」を…！！」

まぁここからは半分は親バカみてぇなもんで、そんな無条件の愛がアオイを結果として皮肉にも壊しちまっていくって話にもなる

アオイの天性の持って生まれたものを見抜いちまったその優しい祖父母は「良かれ」と思ってアオイにその日からピアノとの縁を持たせた

そのアオイは本人が「目覚めた」からといって才能自体に興味もない

ただある時触れたその「音源」に人生塗り替えられる運命にまた巡り会って行くってだけで

葵の祖母「葵くんにピアノを習わせてあげて！

この子はきっとピアノで輝くわ！」

アオイが興味のない、その「音楽」という曖昧で狭い割には根が深い「化け物」はアオイの人生を変えるだけの膨大なエネルギーでアオイを「そっちの世界」に引き摺り込んでいく訳だ