キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ4)

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第98話ページ4

なら、そこを認めたからウチが離れていくか

それは全く違う問題で、ウチはその「凄さ」を知って余計にセンセの事を知りたいと思った

知りたい、って言うよりは「仲良くしたい」「仲良い関係になりたい」の方が少し近い思いかもしれない

自分と存在のかけ離れたものに巡り会うと、まるで人間を見ている目と違くて神様を信仰しているような目で人が見えて来る

多分この時のウチはそういう類の思考でいた

『センセ、ウチセンセの事すごい尊敬する！』

葵「…？」

『センセの事ウチでもっと知りたい！』

そう言って明るく笑えば、センセは無表情のまま「何を言ってるんだ」みたいな目でウチを見る

葵「…知りたい？

何をだ？」

『全部！』

葵「…」

『ぜーんぶ知りたい！』

センセもこういうウチみたいな人間に巡り会うんは初めてなのか、あるいはウチを面倒に思ってたのか素っ気ない態度を貫く

『ね、ピアノもっとウチに聴かせて！』

葵「…俺は仕事がある

お前と長話をしている暇はない」

『えっ…

ほんなら、何で今ピアノ弾いとるん？』

そない聞けばセンセは答える

葵「…ピアノが目についたからだ」

『えっ？』

葵「視界に入ったから手を伸ばして弾いた

特に理由はない」

『…すご…天才って頭の出来が全然違うで』

本物の天才って言うのは価値観がそもそも人間一般のそれとは違う

その頭の構造が謎めいていて、だから知りたくなってまう

ある意味でウチは健全に、ほんで知的好奇心のようなものでセンセを見ていた

多分天才は人と相容れないから永遠の孤独だって言うんは事実なんやろけど、そういう偏見をこの時のウチは全く抱いていないでいた

『…なぁ、ウチでセンセにまた会えるのはいつ？』

葵「…？俺の出勤日を聞いているのか？

音楽の授業がある月曜と木曜はこの学校に出勤してる」

『え、いつもおるんと違うの？』

葵「俺は非常勤講師だ

毎日は出勤していない」

『なら普段何しとるん？』

葵「…ピアノで生計を立てていると言っているだろう

そっちの本業で仕事をしている」

『あ、そか…』

この日からウチでセンセを見る目が変わった

人から嫌厭されるこの孤独の本物の天才を、ウチは誰よりもきっと好んでいた