キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ27)

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第121話ページ27

『…！』

葵「俺はお前達とある程度関わりを持っているから「自分らしさ」と言われて曖昧にではあるが答えが分かる

だがその前提を理解をしていない奴らはそれを分かるためにわざわざお前達の事を分かるための努力はしない

自分が聴いた音でお前達を判断するのがせいぜいの所だ」

そないど正論を突かれて、まぁそれはそうやもしれんなって自分に言われた事を言語的な所に落としてやるとそれが何とも表現の難しいものやって気付ける

葵「言語と音楽は表現こそ違うが「伝えるべき明確なもの」を伝える手段だ

明確さに欠けた曖昧なものを表現できるのが音楽として強みではあるが、そこが理解できるのはある種特殊な人間とも言える

一般には明確でない曖昧な表現を伝えるにはある程度の感性と想像力の領域が含まれる

逆に言うならその明確でないものを表現するのに技巧と表現力そのものが奏者の側に問われる事は自明の理とも言えよう

むしろ技巧なくして、曖昧なものを表現する事はできない」

『…成る程な、だから和音がどうのこうのって技巧に凝るような助言ばっかりしてはったんや

基本押さえずして自分をうまく表現はできへんって事やんね』

何でもセンセの見てるものが分かると、そない価値基準で成り立つ世界が見えて戦略も立てやすくなる

正論も受け入れられるし、言ってる事が通じて認め合える

というより、分かりにくい言い方はしてはるけどちゃんとこの人は「先生」としてウチらを指導してくれてはるんやなって気が付ける感じがして、そない親切な人柄に温かい心も芽生える

『…センセ、なら「自分」がどういうものか表現できればウチらで審査員を鷲掴みにできるん？』

葵「…それが表現として音に乗せられれば評価として認められる可能性もあるだろう

当然そこから先は審査員の好き嫌いの問題に落ちるだろうが」

『けど言うて審査員も人間なんは否定もしようのない事なんよね？

ほんなら皆でウチらを「好き」って、「気に入る」もんに仕立て上げればええんと違う？

好きなもんに辛辣な点は入れらんないやろ』

ウチが意見を言えば、センセは答える

葵「…正論ではあるが難しい事を言うな

通念として明確に「必ず誰もから気に入られるもの」は存在していない

それをうまく表現する事ができるか？」

センセはだんだんウチらにしっかり向き合うようになってきて、ウチらの側もまたセンセを導くような間柄に変わっていた