キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ26)

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第120話ページ26

葵「お前らが知っているかは分からないが、審査員をやっている連中は自分の耳に関しては感性を疑わない

耳だけは間違っていないと言っても良いだろう

そいつらを信じ込ませるのにどれだけの技巧が要るか想像につけられるか？」

リアルな話を聞かせるセンセは夢を手折る大人の表現をしているかのように見えた

でも現実が厳しいもんやって、そういう現実を知らせるだけ実はウチらの中でありがたいとも言えた

葵「まず例えばだが、所謂コンクール曲がコンクール曲として成り立つ理由を深く考えた事はあるか？」

『…さぁな

多分やけど評価のしやすい編曲になっとるんと違う？ウチら一般ピープルにはあまりよう分からへんけど』

葵「審査のしやすいだけで言うなら元来は「しにくい」

奴らの聴いている音楽とそもそも根源が違うからな」

『…おん？』

葵「あいつら一般的な音楽家はそもそも自分の耳を磨く時に俺らの今生きている時代と違う時空の音楽を多く聞いて自分の感性を磨いている

コンクール曲はどちらかと言うと今の時代に見合った現代的な音楽である事が多いから、評価のしやすさで言うなら「あまり耳馴染みのない音」である事が多いんだ

つまり価値基準の明確さで言うなら「基準の明確に定まっていない」ものを審査員は聞かされている事になる」

『…ならいい加減言うとるだけにならん？審査員の兄ちゃんらが』

葵「そうなる事のないように評定のやり方には実は仕組みが決められている

ある一定の基準までは技巧で点がつき、表現力はその後の半分が点として結び付くといったように」

『…？あまりよう分からんけどどういう事か聞いてもええ？』

葵「フィギュアスケートの評価を想像してみると良い

あれは技巧と表現を別に取って「誰もが評価をできる部分」と「自分の感性で点をつける」所の両方で点がつくだろう？

あれと起こる事は大体が同じと考えて良いだろう、つまりある一定の点数までは誰もが技を決めれば点が取れるような仕組み作りにはなっている

逆に言えばそこを捨てると表現力だけの争いに変わる」

加悦「…なら、何がいるんですか？」

加悦ちゃんがそない聞くとセンセは言う

葵「…お前達は今「自分」を表現していると言ったな？

なら聞くが、「自分」とは一体どういったものだ？

そこが分からなければ相手に伝わりようがない」