キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ25)

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第119話ページ25

センセが音楽室に行けば、皆いつもと同じ気持ちを整えた顔でしっかり真面目に取り合う

センセもその態度は弁えているんか指揮棒を振るう時は真剣そのものな眼差しで皆を見ていた

葵「…」

吟味をするように音を聞くセンセの目が何を映して何を見ているんかはウチにもあまりよう分からへん

けど何となく、センセの中には音楽として理想形、或いは正解の形が世界の中に決められていて、その正解ととウチらの音を擦り合わせを自分の中で常にしているかのような顔で指揮棒を振っているように思えた

そういう真面目な顔をしてはるだけセンセは音楽に関して自分の自認している正義が多分あるんねやろけど、そない正解の分からない世界に身を投じてそれを正論と呼ぶその姿勢にはどこかで偏見を抱かざるを得ないんも多分きっと事実やった

葵「…確かに集団として奏でる音楽としては及第点に至ったと言っても良いかもしれない

だが聞くが、お前達は一体誰にこの曲を奏でる？」

加悦「…え…？」

葵「俺のためでない事は音を聴けばすぐに分かるが、その先に誰がいるのか全く俺の予想につかない

誰のために奏でている？先にいる相手にこれではお前達の表現は伝わらないぞ

審査員になら尚の事そうだろう」

『…センセ、それを言うてるならウチらのため以外の何者でもあらんよ

これが「ウチらの音楽や」ってウチらで表現しとるだけで、明確に誰かのためになんて奏でてへん』

葵「…！？」

『センセはきっと人に音を聴いてもらう機会が多いからそういう事が頭にあるんやろ

でもウチらは違うんよ、ウチらで一番納得する演奏で相手を巻き込むん

主導権ならウチらで握って、最後まで相手に付き合ってもらう気でウチらは奏でとるん』

ウチでそない表現を使えば、センセは何か考えに違いがあるんを認めたんか一旦びっくりした顔をしてそしてすぐに冷静な顔に徐々に戻る

葵「…表現の自由を先に立たせて後から審査員を唸らせる気か

成る程、確かによく的を射た意見だとも言えるしお前達「らしい」と言えばその通りだと言えよう

だが、その方が難度が格段に上がる事に自分達で気付いているか？」

センセはようやくウチらの事をまともに取り合う気で見ているかのように、そない説教じみた言葉でウチらに「音楽」っていうものに関する教育を一通り施してくれていた