第118話 ページ24
ほんで、ウチはいつも先生を呼びに行く係になる
別にウチが吹奏楽部と関わりを持ってへんでもきっとウチでセンセを追いかけて声はかけるんやろけど、そない事情もあってウチを止めるのはその本人以外誰もおらんかった
事情っていう口実ができればウチも当たり前にセンセに声をかけられるようになっていく訳や
そない事情もウチらの速度も知らんセンセは違う次元におるような感じがウチでして、呼び止めてウチらの世界に引き込むにはそない口実が訳のある言葉に変わっていくものでもある
葵「…何の用だ」
『センセ、真面目に吹奏楽部の子の演奏聴いて』
葵「…?」
『あれから少しウチらで変わって、今までと違う音を奏でるようになったんよ
それ知ってもらいたいからウチらのおる音楽室へ来て』
葵「…?なら今までの演奏は一体何の時間だったんだ?
無駄な時間を浪費して音楽に興じるような真似を続けていたとでも言うのか?」
『違うで
センセに分かるように言うんねやったら、今までのウチらは「自分達」だけの演奏で止まってたんよ
それが「ウチら皆で奏でる」音楽に変わったって話で』
葵「…」
『せやから、その成長をセンセで実感して』
そない言えば意図は理解してくれたのか、センセはウチに付き合ってくれる気持ちを準備してくれる
葵「…俺はお前達の音楽の講師をやるためにこの学校へ来ている訳ではない」
『知っとるよ
でもセンセ、自分に時間ある時は皆のために自分の時間使って親切に指導してくれとるんやろ?
加悦ちゃんからウチで聞いたで』
葵「…」
『センセ、逃げへんでウチらにまともに付き合ってや
今日は時間にも余裕あるやろ?センセの演奏会は先週で終わっとるはずやで』
そない事言うて不躾にセンセを相手すれば、センセは変わらずに「面倒や」って顔してそれでも音楽の教師らしい振る舞いをウチにする
葵「…定期演奏会は俺の時間の余裕とは特に依存関係にない
面倒に違いはないが、あれが終わったからと言って俺が今日忙しい事を否定する道具にならない」
『でも別にええやろ?
そこを弁えてウチらの高校に教員として来てるんと違くて?』
色々言うてセンセを探りつつも、深くはあまり理解に追いつけないままウチらは「ウチら全体」っていう世界の中を行き来しているかのように時間を使っていた
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年10月17日 18時