キミとお前と、俺の見ている世界3 (ページ1)

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第95話ページ1

『…すごいな

センセピアノの天才なんと違うんの？』

ウチは奏が終わったセンセと向き合ってそない言葉で言う

葵「…天才などと呼ばれるのは気に入らないが、その呼び名は聞き飽きている」

『え…？』

葵「俺は子供の時から「ピアノの天才」、「世界の結城葵」などとどうでも良い相手によくそういった名で持て囃されている」

そない言われて、ウチも意味が分からんから意味の正体を追うように問いかける

『…センセはピアノの天才なん？

ホンマの？』

葵「…何度同じ事を言わせる気だ

お前に分かるように言うなら、定例の演奏会に今年も面倒だが呼ばれている」

そない言うてセンセはピアノの上に不躾に置かれているあるビラを手に取ってウチに手渡す

『…キョウト芸術大学定期演奏会…？

結城葵出演…？』

葵「…俺の出身大学の定例の演奏会のビラだ

ここに俺は金で呼ばれている」

この言葉だけやと多分苦しいんやけど、理解はウチでできた

要は金を払ってでもセンセの音楽を聴きたい人間が世の中にぎょうさんおって、ほんでセンセは金で呼ばれてピアノを演奏している「仕事」で音楽をやっとるホンマの音楽家の人間やった

そない狭い深い世界の事情なんて知らんウチは、全然知らない世界の住人にウチで巡り会ったんやってとんでもなく驚いた

『…マジの音楽家やん…

え、職業ホンマはピアニストなん？』

葵「そういう事だ

俺の本業は世界中でピアノを奏でる演奏家

それを生業にして俺は生きている」

『うぇ…マジで…？

ウチ今氷山の一角みたいなもんに巡り会っとるんと違うんの？』

葵「…さてな

それは他人の評価で、俺の評価とは違う」

『え…嘘やんな…

…ごめん、センセの事ちびっこくてかわええ大人って舐めとったわ』

葵「…別に勝手に言っていれば良いが、お前は随分と正直で曲がる事を知らないな」

『え…だってウチ身長160なんに目線の合う男の人これで初めてやもん

センセ身長いくつ？』

葵「…168だが

それがどうした？」

『いや…ちびっこいやん…

かわええサイズ感やな…』

葵「…」

ウチも何て言葉で話したらええんか分からんで、瞬間的に起きた色々にウチの心でついていかれへん心地で適当に物事を言うていた