キミとお前と、俺の見ている世界2 (ページ44)

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第88話ページ44

葵「…今後授業開始の時の挨拶は割愛する

お前達が席に着いた瞬間から授業は開始だ

始業までは好きにして良い」

そない人間を冷たくあしらうようなセンセの言い方に、純情で子供心が抜けない高校1年生のウチらは下手に刺激を受けた

ウチはとりわけ何も気にしていなかったけど、他の生徒の顔は戦慄と恐怖、それから何とも言えない無表情でセンセの意向を窺っているように見えた

葵「…教科書はこの高校指定の教科書を使う

購入していない者は来週までに購入を済ませるように

それと、アルトリコーダーを使用するからその購入もできるだけ早く済ませるように」

生徒1「…あの、質問良いですか？」

葵「何だ？」

生徒1「アルトリコーダーはいつまでに買えば良いですか？」

葵「…4月中には購入を済ませておく方が良いだろう

6月の上旬にリコーダーの技能で試験を行う」

生徒2「えっ…」

葵「今日は初回授業だからこの1年間の予定を伝えて、授業自体は次回からだ

お前達、学習指導要項は持っているな？」

言われてウチらはまるで軍団を率いる上官に従う下流兵士のように、恐る恐る学習指導要項を開く

ついでに学習指導要領っちゅーもんは高校受験で受かった皆に配られるカリキュラムの詳細を詰めたもので、ウチはもらったその瞬間に中身を全部読んだから何となく内容は理解してるけど分かってへん学生はそれが重要な書類やって事も分かっていない

生徒3「あの…すみません、忘れました」

葵「…なら隣の学生から見せてもらえ

俺に敢えて言う必要はどこにある？」

生徒3「…！？」

葵「高校生のお前達ならある程度自分の面倒は自分で見切れるはずだ

それとも敢えて面倒な説教で俺に時間を使わせる気か？」

生徒3「いえ…すみません」

そない言うてその学生は素直に隣の子からカリキュラムを見せてもらっていた

ウチは特に何も思わんと、静かに普通のウチの心でカリキュラムを開いて見る

葵「音楽の今後の予定は要項に記載の通りだ

期末試験は技能試験とは別に筆記試験を準備する、技能試験との兼ね合いで成績はつけると思って良い」

ウチはこの音楽の先生との出会いに、不思議と何かウチの知ってる常識と世界の常識が入れ替わる瞬間ってもんを実感していた