第76話 ページ31
盧笙side
盧「…?」
新米教師は自信なさげに俺にそう答える
その言葉に違和感を覚えつつも、俺が何かを伺うよりも早く向こうが先に俺に話をし始める
颯人「俺、元は政治経済学部の出身なんです」
盧「…?」
弱々しく少し自分に自信がなさそうに話す新米教師に俺は合わせるように耳を傾ける
俺も例外なく、日本人のこのコミュニケーションのやり方に慣れている
颯人「本来なら政治経済学部の出身は社会の先生になるのが一般的だって思いませんか?
だけど俺は経済学は得意でも、社会学は苦手で受け付けてもらえないんですよ
そこも逃げと言えば逃げなんですけど…」
盧「…」
何か他人が捌け口を失っているものを持っていると、それを聞いてやりたいなんて感情が湧くのは俺がお人好しだからなんやろか
それとも、日本人は皆そういう気質をどこかに持ち合わせているんやろか
分からないけど、何か自分が聞いた方がええ何かをきっと抱えとるんと違うかなんて心配の気持ちを抱いてはじっと特に何も厳しい事は言わんで黙って聞く
颯人「…だから大学の授業で教員免許を取得する授業も受けて今は教員の資格一応持ってはいるんですけど…
何だか、「俺本当に先生になるんだな」って気持ちが今は強くて、期待より不安の方が大きいんです」
盧「…まぁ新米の頃はそない心にもなるもんやよな
けど、慣れたら割と普通にやっていけるで」
颯人「そう言ってくださると少し気持ちがしっかりしてきます」
鈍く笑ってそない言う男に、俺はきっとこの相手は綺麗な育ちをしてる俺と異なる類の人間なんやろなって勝手に自分の中の偏見でその子を判断していく
颯人「…俺、躑躅森先生の事憧れだって思ってるんですよ
ディビジョンラップバトルにも出てるし、高校教師もやってるし強いんだなって」
盧「…そない言われる人間と俺は違うで
普通のラップやっとるだけのただの一般人や」
颯人「でも…俺は政府からマイクを配られた時、それを握るような選択を選べなかったから…」
そうやって抱えきれない何かを吐露する新米に、俺もつい注意を向ける
颯人「…本当は俺、政治学をやって世界を変える人間に憧れていたんです
なりたくてもなれない自分と向き合って、絶望した結果今の俺がいるんです」
そない切り口で始まる新米の話を聞いて、俺はそいつと自分の何か似通う部分を感じて俺なりに自分と違うその他人を理解し始めていた
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星猫 - 続編おめでとうございます!高評価しました! (2021年10月5日 9時) (レス) id: f84c743866 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウ | 作成日時:2021年10月2日 16時