キミとお前と、俺の見ている世界2 (ページ22)

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第67話ページ22

2人の人間は、とある地点に向けて歩く

その過程に、2人の人間には会話が鈍やかに存在している

？「…お前は、まるで「アレ」みたいだな」

ナオ「…？」

男性は何かを思い出しているかのように、少女に言葉を紡ぐ

？「…お前と俺がこうして話ができるようになる前、俺を少しだけ変えた人間が1人いた

ただの1人の学生が、教師の俺に説き伏せるような真似をして、俺の人生を音楽に集中する方向に近付けた

今思えばアレと出会った事で俺の人生は真っ直ぐで間違いのないものになったとも言えるだろう」

ナオ「…楽しいと思ってる？ピアノ弾くの」

？「楽しいかは全く別の問題だ

だが、俺にとってピアノは俺の人生そのものだ」

ナオ「…」

？「それを受け入れる事ができるようになったのは、そいつと出会った事がきっかけかもしれないな」

ナオ「…好きなの？その人の事」

？「非凡な人種だとは思っている

アレは音楽でも輝けるだろうな、音楽を専門としてる俺が言うならほぼ間違いはない」

ナオ「…」

？「リコーダーは下手だが歌は人並みに上手い程度の人種だ

だが、あいつはそれよりも「音に言葉をつける」のが不必要に上手いんだ

音だけで言葉を作れる、あいつは言葉と才能に恵まれた1人の人間だったと言えよう」

ナオ「…すごい知り合いが叔父さんにはいるんだね

私も叔父さんはすごいって思うけど、叔父さんの側にはすごい人で溢れているの？」

？「それは全く別の問題だな

俺の周囲には音楽の事など何一つ分かってもいない、馬鹿で凡才な人間が多く溢れている」

ナオ「…」

？「だがそれも住む世界によって違うものだ

今は俺も音楽一筋でやっているから、音楽の事をよく知っている俺に近い人間に多く出会える」

ナオ「…狭い専門的な世界を叔父さんは選んだんだね

一般性からは離れる事を選んで、その道を極める事にしたんだ」

？「それが俺に向いてるのは認めざるを得ない事実だ

所詮、才能なんてあるだけ無駄なつまらない人生の材料だからな」

ナオ「…」

？「まぁお前には分からなくて良い、分かるはずもないだろうから

だが一つだけ俺の言える事があるとするなら、お前は確かに自由で幸せな人間だ

これから何者にもなれるんだからな」

2人は歳の差は大きくかけ離れているのに、その距離を感じさせる事のないような大人な会話でオオサカの街を歩いてどこかへ向かって消えて行った