第94話 ページ49
そして「あの時死んだ僕」を回収しに来ている「この僕(いまのぼく)」は、全ての真相を知っている
そもそもこいつが狙われているのは、白膠木の率いるオオサカのチームの抑止力に仕立て上げるためだっていう歪んだ事実が存在している事も当然「知ってはいる」
天谷奴が中王区(あいつら)に微妙に不信感を抱かれているっていうのは今に始まっている話とも違うけど、それも含めてオオサカ勢力に釘を刺しておく必要があの女どもにはきっとあるのだろう
例えば、白膠木はあの見た目の割に侮る事のできない相手
あの男は何も真面目に考えていないような顔をして、存外頭の回転が早くて真理を見つけ出す事に長けている性質を持つ
それで天谷奴も侮れないと警戒している事を僕も知ってる
その白膠木を繋いでおける理由は、人に対して疑問を抱いて接したりしないで人に対して平等に信用と善の心を抱く「聖人」の躑躅森という男だ
その男が自分にとって必要な存在であると白膠木が認めているから、互いを守るかのようにかつて離れた2人同士が引き合ってできているのが今のオオサカの現状
つまりは天谷奴の思いのままに白膠木も躑躅森も掴まれているだけに過ぎない
そこに余計な要因である「白膠木の妹」を用意する理由は僕にとって疑問だと言えた
でもその要因が、「まるで何も意味を成さない存在であるから」用意されたと気付けば、後味の悪い事この上ないものだと言えるだろう
その真相に気付いてしまったのは、僕がまだあの女どもの狙いを正しく解釈できていない頃から「それ」と接触していたからだ
乱「ねぇねぇ、そこのオネーサン」
『…おん？』
乱「お兄ちゃんが不機嫌になってる理由、知りたい？」
僕とその子の出会いは左馬刻と白膠木が決裂したその直後
その子を傀儡(おにんぎょう)にするために動いていた「僕」はその子と接触して掻き乱してやろうって決めていた
それがもしかしてこういう結末を招くとは、その日の「掻き乱してきた僕」の知る由もない事だって言えよう−−−−
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作者名：ユウ | 作成日時：2021年7月31日 13時
