第69話 ページ24
簓side
そして2人と別れて、1人の帰り道で色々自分の思考を張り巡らす
Aと向き合えと自分は言われた
今まで見逃したらあかんかったサインがあったはずやって零は言うてるし、盧笙も思いを曲げずに伝えてAの本音を分かっていた事がある言う事実を聞かせてくれている
知らないのは俺だけや言う事なん？
それとも「それが俺だから」分からんでいたっちゅー、そない事なん？
簓「…俺は少なくともお前のせいで不幸になったなんて思った事何もあらんわ
お前はいつからそない思い抱えとったん？」
そう独り言ちつつ、自分の中でAの色々を振り返ってみる
あいつが俺の目の前で笑うようになったんはいつからやっけ
元からああいう顔で笑う奴やったのと違くて、昔はあまり笑わんで他人に冷たい目を向けるような奴やった
今もその目に少しの冷徹さを含んでいるんは変わらんけど、そこに温度と丸みとユーモアが含まれてる言う事を俺も理解している
あいつは優しい奴やった
それがとりわけ、「俺の目線」やからそう思える
簓「…何もお前の事俺は理解できてへんねやな
何がお前を苦しめてるんか、何も分からんねん」
これは優しさ故の間違いなのか
あるいは独断と偏見による歪んだAの正義感が生み出した因縁か
あるいは何も分かってない俺にどこかの誰かが後ろ指を刺して作り出した、俺ら2人が啀み合う以外の道を辿る真似が許される事のないステージなのか
喧嘩もした事のない俺ら2人の兄妹の形が、これを起点に何か変わってしまう予感がしてつい苦い気持ちを芽生えさせる
簓「…お前とだけは決裂しとうない
だからといって、迎えに行けるんなら迎えに行って連れてったりたいねん
俺が今ここで生きる、この世の中に」
そう言って、誰もいない月と星が雲に隠れて鈍い光を放つ夜空に自分の気持ちをぶつけていた
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作者名：ユウ | 作成日時：2021年7月31日 13時
