もっと溺れちゃえばいいのに(桃)

31．幸せになってください ページ32

？？？side.

拝啓、名前が分からない君へ。

あれから君はどうなったんだろう。

ちゃんと生まれ変わって、俺じゃない誰かと幸せにすごしているのだろうか。

俺は、今世で始めて出来た彼女と同棲を始めたんだ。

わりとあっさりしてる君なら、“そっか、よかったね”って言うと思うけど少しは嫉妬でもして欲しいものだ。

…なんて、我が儘かもしれないけどさ。




もし、この手紙が届くなら言いたいことは一つだけ。


『幸せになってください』

あんなに酷いことをしてたのによく言えるな、なんて思うかもしれないし偽善だって受け取られることも重々承知の上。

でも、これは本心だよ。



あ…そういや悪いけど、今世でも俺は変われそうにないや。





この憎たらしいほどに幸せが溢れる世界で、幸せを見つけられたらいいな。





愛おしいほど嘘つきで、傷つけたい位に可愛い君は俺にとっては最高の相手だったよ。

今の彼女もお前によく似てるよ。




世界で一番狂った愛情を振りかざしてもなお、俺を好きで居てくれてありがとう。

今更、愛してるなんて言ったら君はどんな顔をするだろうか。


なぁ、いつか。

いつか、またどこかで会えたら本当の名前で本心で俺と向き合ってくれますか？


俺の本当の名前も教えるからさ。

そしたら、また海を歩こうか。

俺の支えは無しでさ。



っと、この辺にしとくかな。

そろそろ家に帰らないと、彼女が心配するからな。






じゃあ、また会えたときの約束な。

前世で何度も何度も言った言葉を、君に言って欲しい。

多分、覚えのいい君は覚えてんだろ。





『もっと溺れちゃえばいいのに。』

って。

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