XV ページ15
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「なぁに、」
「お前に用はねぇ、そっちだ」
ぎゅ、と背中に手を回して先程よりも強く私の服を握りしめて抱き寄せた。ぐるりと私の世界を逆にしてくれたので、彼がいるその世界が映ることはなく、月の淡い光と海だけが映し出された。その向こうに手を伸ばせば、どこかへ飲み込まれていくのでないかと、場違いなことを考える。
「これ以上、Aちゃんを傷つけないで」
「傷つけた覚えなんてねぇよ。ほら、早く渡してくれや」
「人の心なんて見れない癖に、なんでそんな事言うの」
冷たく放った彼女の言葉を、彼は理解ができなかったようだった。呆れたのか、考えつかないのか、それは分からなかったが「は?」と空っぽな声が漏れていた。
「知らないくせに、偉そうに。なぁんにも知らないから、偉そうにできるんだよ。」
「言ってる意味がわからねぇんだよ」
「お前は馬鹿だって言ってんの!!」
啖呵を切るようなその声は、波に伝わった。夜にゆらゆらと浮かんでいた海月のような月は、静かに爆ぜた。それは、ひらひらとリボンの様に下へ下へと散っていく。そしてまた、海面に浮かんできた。
「もういい、もういいよ。」
「充分だよ、もう、これ以上、なるが傷つく必要はないの。これは、」
私と十四郎の問題だから。
そう言って、目を合わせて私は嗤う。
その瞳は、綺麗でもなんでもなかった。
世界は鮮やかな光を放って、爆ぜて滲んだ。
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湯木(プロフ) - ゆうひさん» 返信有難うございます( ;; )本当の事ですよ!この小説の設定が私の性癖に刺さりすぎて辛いです.......季節の変わり目で風邪の引きやすい季節になってきているのでゆうひさんのお身体に負担がかからないぐらいで更新頑張ってください!応援してます! (2019年5月24日 23時) (レス) id: 8f94a810be (このIDを非表示/違反報告)
ゆうひ(プロフ) - 湯木さん» 飛んできてくれてありがとうございます~!!私が銀魂夢を書き始めた頃からお世話になってる愛しのお友達ちゃんです笑エモさを感じてくれてめちゃくちゃ嬉しいです~!!!!ワー!!本当のことならば幸せです… (2019年5月24日 0時) (レス) id: cee43a9737 (このIDを非表示/違反報告)
湯木(プロフ) - 堕天使さんの所から飛んできました!堕天使さんの作品を読む前に題名が目に付いて後で読もうと思っていたのですがまさか堕天使さんのお友達だったとは!!ほんとにエモくて死にそうです.......。類は友を呼ぶって本当なんですね! (2019年5月24日 0時) (レス) id: 8f94a810be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうひ | 作成日時:2019年5月19日 23時