才媛のヴァイオリニスト[Alan_S] (ページ7)

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謎の味方ページ7

『んん...』

また同じ夢を見た。

私がヴァイオリンを弾いているあいだにお父さんが苦しそうに胸を抑えている夢。

母｢おはよう。私、もう出るから。｣

『ん。いってらっしゃい。』

あの日からお母さんもお父さんのことを一切口にしなくなった。
家族から笑顔が消え、一緒に出かけることも音楽について話すこともなくなった。

『ねぇ、学校行かなきゃダメ？』

母｢どうしたの？｣

『いや...理由は...』

母｢お母さん仕事遅れちゃうから。
具合悪くないならちゃんと行きなさい。｣

『.....ごめん。』

お母さんはシングルマザーになり、お金を稼ぐため朝から晩まで仕事。
会話ができるのもこの朝の少しの間だけ。

その寂しさが、より一層自分への嫌悪感を際立たせた。

『いってきます。』

誰もいない部屋に向かってつぶやき、私は学校へ向かう。

｢今日ヴァイオリンのテストじゃん。｣

｢やばいって、マジで。全然上達しないし...｣

｢大丈夫でしょ、杉野がいるしw｣

｢あ、そっか！あははっ！｣

少し前までは悔しい気持ちもあった。

自分の能力を見せつけてやりたいと楽器を手にしたこともあった。

でも手にした瞬間に、またあの感情が戻ってくる。

｢おい、テストちゃんと受けろよ。｣

『無理です。』

｢最後まで逃げんのかよ。｣

『えぇ、まぁそうですね。』

｢その人を見下した態度、お前にとる資格はねーんだよ！｣

ｶﾞﾝｯ＿＿＿＿ﾊﾞﾀｯ＿＿ﾄﾞｻ＿

『いた.....』

｢マジでムカつく。｣

『...』

椅子を蹴られ、その衝撃で体が放り出される。

蹴った奴らの甲高い笑い声が廊下に響き、だんだん小さくなっていった。

起き上がろうとしたその時＿＿＿

｢あの...大丈夫です...か？｣

『...誰？』

｢えっ、同じクラスなんですけど...｣

『覚えてない。』

｢難波悠亜です。
中等部からの持ち上がり生徒です。｣

中等部...ってことはさっきの奴らとか如月麗華とも仲がいいのか

｢私...中学のとき如月さんにいじめられてて...｣

『え？』

｢あの、奈緒...さっきの椅子蹴った子とは仲良かったんだけどね。奈緒ちゃんは成績優秀で、高校に入ってからはああいう感じになっちゃって...｣

『如月麗華...が主犯ってことか...』

｢え？｣

『ううん、なんでもない。』

学校では地味に過ごすって決めてたけど、このまま嫌がらせを続けられるのは逆に目立つ。

私は昼休み、如月麗華を校舎裏に呼び出した。