ヘドロの森のバイトちゃんは今日も天使【坂田銀時】

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「お邪魔します…」









小声でそう呟いて、そっと戸を開ける。

鍵も閉めないなんて、なんて無用心なんだと心配になりながら、靴を脱いだ。






これだけ静かな万事屋も、珍しい。

しんとした部屋を見渡す限り、やはり二人はまだ仕事を終えていないようだった。







そっと襖を開けると、苦しそうに眠っている銀時さん。

紅色に染まった頬には、汗が浮かんでいた。







風邪と言っても、なかなか熱が高そうだ。

とりあえずと氷水にタオルを浸して、足を一歩踏み入れた。









「…失礼しますね、」









ピト、と額に乗せると、冷たさからか一瞬顔を顰めたものの、起きることはなかった。

…こんな銀時さん、初めて見たかもしれない。






彼はいつだって飄々としていて、芯の真っ直ぐ通ったような瞳をしていた。









「ん、…」









小さくなって身をよじる姿が、なんだか子供のようで、かわいらしい。

銀時さんは苦しんでいるわけだから、そんなこと言っちゃだめなんだけれど。









「…りんごでもすりおろそうかな、」









彼の布団をかけ直して、よいしょ、と立ち上がろうとすると、突然掴まれた手首。









「わっ、」









予想もしていなかった出来事に、もう一度座り込んでしまった。









「……行くな、」









僅かに掠れた低い声と、薄っすらと開かれた彼の瞳に、身動きが取れなくなる。

……もしかして、寝ぼけてる？







掴まれた手首から伝わる彼の体温につられるように、一気に私の体も熱くなった。


(ど、どうしよう)



混乱した頭では何も考えられず、思うままに彼の手を取る。









「…どこにも行きません、側にいますよ…、」

「……ん、」









咄嗟に紡いだ言葉に、どうやら安心してくれたようで、再びゆっくりと瞳を閉じる。

すぅ、すぅ、と規則正しい寝息が聞こえてきて、私もようやく呼吸ができた。









(びっくりした……っ、)









恥ずかしくて、消えてしまいそう。

彼が起きたときにこのことを覚えていないといいな、と思いつつ、今だに私の手首を掴む彼の手をぎこちなく握った。









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