立花彩、歌い手始めました。【KZ】【utit】2nd

おわったー！と声を上げて2人で椅子に凭れ掛かって伸びをした。
それがまた何処か可笑しく感じて顔を見合わせて笑った。
彼との時間でいちばん素直になれるのは歌っていると気なのかもね。





はい、もう大丈夫だからね
そう言って温かいココアを出してくれるのは普段尖っている部分も多い彼の隠し持ったとびきりの優しさだ。

実は彼の部屋にそそくさと逃げてきたのは久しぶりに悪夢を見たから。
だけど彼は嫌な顔一つもせずにいらっしゃいと言ってくれた。

「なんか新鮮だよね、こうして話しすんの」
「そうですか？なら楽しいから毎日来ようかな」

半分冗談で言ったのに私の頭に手を乗せ、わしゃわしゃと髪を控えめにかき混ぜてからぽんぽんと撫でた。
怖くなってもそうじゃなくても何時でも待ってるからと言って。





「おはよう、彩ちゃん〜待ってたで!!」
「お待たせしました!!」

何にしますか、なんて言わなくても伝わっているくらい私たちは息が合っている。そう信じていた。
少し抜けてるところがあったって独りじゃないのだから超えて行けるのだ。


台所で語らうのもある意味いいものだ。朝早く起きるのが苦手な彼と彼を起こすのが好きな私の活動。
今日はパンケーキだね、私達の中では5年前から変わらず記念日には欠かせない特別な朝ご飯だ。
これからも続く私達の破れぬ永遠の絆を誓って作るんだ。




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ありがとう私を救ってくださって、なんて恥ずかしくて言えないけれど。
私は彼らに出会うことが出来たからこうして前向きになれて、家族に認めてもらえて、そして何より歌い手になれた。

感謝でいっぱい、でもそんな感謝要らないって言われるに決まってる。



なら私たちの私たちにしかできない術で伝えよう。




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「聞いてください、私のこの歌を!!」







〔完〕