立花彩、歌い手始めました。【KZ】【utit】2nd

はちじゅうさん ページ34

彩side



私は絶句した、いや驚きを通り過ぎて呆れたと言っても過言ではない。





「……ママ？」




私の声にもならなかったような微かな呟きを皆逃さなかった。
つい先程まで賑やかだった店内に沈黙が広がる。きっと酔っていた人もいただろうに。


その沈黙を破ったのはやはりそらるさんだった。



「彩ちゃん、今日のライブにお母さんが来てたんだよ」



私は返事をしなかった。そんなこと分かっていた。私がステージの上からこの目で見つけたんだから。
なんてこれは言い訳で、その言葉を出す勇気も無かった。



「彩ちゃんが家出をして俺らの元に来たあの日、俺がお母さんを訪ねたんだ」



え……？そらるさんがママを？



「黙ってて悪かった。でもねこれは彩ちゃんの為でもあるのを分かってて欲しい」
「……私の為、ですか？」




淡々と進んでいく会話に呆然としていたがついに無意識に口から言葉が飛び出した。



「そう、だよ」


その私の言葉を受けたのはまふくんだった。



「ある意味彩ちゃんの為で、ある意味僕らの為だよ」



今の私にはその言葉が何を現しているのか理解できなかった。
ただ解ったのはママが此処に来た理由だけ。




「彩……」
「ママ、あのさ」



その瞬間、ママは私に腕を伸ばし強く抱き締めた。
私は何も言わなかった。受け入れようと思った。




「彩、ごめん。今までごめんなさい」









「やっぱり家に帰って来て欲しいの」

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