【ヒロアカ】死柄木弔の忠犬６ (ページ40)

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「おいおいマジかよ！あの子本当にやったよ！」

チューブの結合部に爪を立てながら強引に引っ張ると、あっけなくマスクのパーツが弾け飛んだ。
生命維持装置を壊したけれど、壊したからといって即死するわけではあるまい。
怒りに身を任せている割に存外頭は冷静で、せっかくここまで距離を詰めたからには離すまいと奴の体に脚を巻きつけてしがみついた。

「これでもまだ余裕ぶれンのか！？」

個性の影響か不明だがいつもより荒々しい口調になりつつ左腕を貫通したままの黒爪をぎりぎりと握りしめ、右手で奴の顔面に爪を立てようと振りかぶる。
しかし既のところでオールフォーワンの腕に捕まり互いの腕力が拮抗しあう。

「捨て身の特攻…！いやはや手負いの獣は恐ろしい！」

「そちらこそ…手負いの体で出しゃばりすぎるなよ…！」

眼前ののっぺら坊に爪を立てたい、薄い皮膚を裂いて顔面がぐちゃぐちゃになるまで。
薄っぺらい言葉をそれっぽくほざくその喉元を掻っ切ってやりたい。
もう二度と弔さんを傷つけることがないよう、この世から消してやりたい。

「何が憎しみを絶やすなだ…！」

神野での戦いを見るに、奴の基本攻撃は先ほどの黒爪と掌から空気を押し出す空気砲が主流。
どちらも遠距離からの攻撃に特化していて放出系、おそらく自身に近づけないことが目的だと考えられる。
何故なら奴自身も身体が弱っていることをよく理解しているから。
だからこの間合いにまで入ってしまえば案外脆い。
ここまで接近していれば掌からの空気砲は食らわない。
あとは衝撃反転に備えて殴打は避け、爪と牙で抉るような攻撃ならば有効なはず。

と、ここまで考えて私はかつて常闇くんと一戦交えた時のことを思い出した。
彼もまた間合いに入ること自体が難しく、私とは相性が悪かった相手であり天敵。
同じ特性のオールフォーワン相手に捨て身とはいえここまで間合いに踏み込めたことに、私はあの日越えられなかった壁を越えられた気がして状況にそぐわず口角が上がってしまった。

とはいえ長いようで短い拮抗状態が続き、このままではよくないと身を捻るが奴の腕力には敵わない。
ここでも自分のパワー不足を痛感して悔しくて歯を強く食いしばったその時だ、

ドスっと強い衝撃が背中に走った。
遅れてやってくる痛みと熱さにやられた、と顔を顰めた。
　
　
　