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「逃げても構いませんが、地獄の果てまで追いかけますよ」
「それは大した忠誠心だ、ところで…」
オールフォーワン自身もここで逃げ出して意味がないことはわかっているはず。
緊迫した空気が漂うなか、奴は顎に手を当てニヤニヤと不気味な笑みを浮かべる。
「君の個性、少し興味がある」
その言葉に含まれる意味、即ち個性を奪われるかもしれないということを理解して全身の毛が逆立った。
本能がこいつは危険だと警鐘を鳴らし始める。
思えば自身がターゲットになる可能性を考慮していなかった。
「君の忠誠心は個性故だと聞いている」
ジリジリと無意識に間合いを広げてしまう自身の足が情けない。
「もし個性を奪ったら…君の弔への執着はなくなるのかな？」
「…っ」
その言葉は残酷かつ的確に私の心を抉った。
言い表せない不安と恐怖に襲われて私は何も言えなかった。
何せ自分でも自信がない。
私と弔さんを繋いでいるのは主従関係。
もし個性がなくなったら、私は彼を守る意義を失ってしまうのではないか？
個性がなくなる、つまり主従関係が解消された時私は彼を今までのように守りたいと思わなくなるのでは？
そもそも彼に対する愛情も敬意も個性の影響で形成されたものだとしたら。
個性を失ってもなお私は弔さんを愛していると言えるのだろうか。
「実に興味深い」
何が興味深いだ、私の個性そのものには興味なんかなくて、ただ私を無力化できる上に弔さんに執着しなくなるから一石二鳥だと思ってるだけだろう。
恐れている場合ではない、気を強く持たなければ。
不安と恐怖を拭い去り、依然苦しみもがいている弔さんを見やった。
大丈夫、個性があろうがなかろうが、私は弔さんを愛している。
そう自分自身に言い聞かせ、虚勢を張ることで精一杯だった。
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作者名：さかさま | 作成日時：2022年6月13日 23時
