258 ページ16
数日ぶりに弔さんの元へ訪れた時、そこにいたのは弔さんとオールフォーワン本体、スピナーさんだけだった。
「他の皆さんは？」
「みんな相変わらず自由にやってる」
スピナーさんは淡々と答えた。
特にスケプティックさんは解放戦士たちを増やすと息を巻いていたそう。
チラリと弔さんの様子を窺うと、以前とは違って落ち着いているようではあるがじっと動かないまま長い髪で視界を遮るように俯いている。
「弔さん…ですか？」
恐る恐る歩み寄ると、私の存在に気付いたのかゆっくりとこちらを見た彼は私を見つめしばしの沈黙を経てようやく口を開いた。
「…目が覚めてからずっとこうだ」
「え…？」
「変な感じなんだ…俺ってなんだろ…」
ぼんやりとした緋い瞳は答えを求めるように私を見つめる。
弔さんの意識とオールフォーワンの意識が混在しているということを言っているのだろうか。
けれどその口調と一人称から比較的弔さんの意識が表に出てきているのだろうと推測できる。
今なら弔さん自身に聞けるかもしれない。
「…弔さん、私には信じられません。本当にコレがあなたの望んだ結果なんですか？」
簡潔にそう問いかけた。
オールフォーワンの思惑通りに駒になるなんてあなたらしくない。
私にはコレが弔さんの意思だなんて信じられない。
「僕の力を欲したのは弔自身さ」
「…私は弔さんに聞いてるんです。黙っててください」
すると予想通りというかなんというか、やはりオールフォーワンの意識が口を挟んできた。
相変わらず弔さんの声でらしくない喋り方をするのはやめてほしい、吐き気がする。
「ねぇ弔さん」
再び呼びかけると弔さんは突然呻き声を上げて苦しそうにもがき始めた。
弔さんの身体の中でなにが起きてるのか、苦しんでいる弔さんを前に何もできないことが歯痒い。
「俺の身体だって言っただろ…先生…！」
「っ！」
目を白黒させながら絞り出すよう声で弔さんは自身に向かってそう言った。
抗っているんだ、オールフォーワンの意識に。
逃げ場のない自分の身体の中でたった一人で。
「っ弔さん！！」
そう思うといてもたってもいられず、髪を振り乱してもがく弔さんに手を伸ばしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 516人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかさま | 作成日時：2022年6月13日 23時
