【ヒロアカ】死柄木弔の忠犬５ (ページ35)

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転弧というのがどんな人物かもわからないが、弔さんのその反応で知られたくない存在なのだろうということは理解した。
過去に関する人物か故人である可能性もある。
正直その名前の響きだけでは男か女かも判別がつかないが、無意識に口にしたということはかなり身近な人物だったのかも。

「どうしても気になって…」

これは本当に私の我が儘だ。
弔さんには話す義務もないはずだけど、ただ私が気になるから聞きたいのだ。
それにもし女性であったとしたら、もしかしたら弔さんの前の恋人である可能性も…と考え始めたら止まらなくて早くその正体を突き止めたくて仕方ない。

「その…もし元恋人とかでも、問題ありませんから…」

私としてはあらゆる可能性を考えて予防線を張ったつもりが、弔さんは目をまんまるくしたかと思えば乾いた笑い声を上げてそれを否定した。

「そうくるか…違ぇよ」

「じゃあ…？」

私の追求に観念したのか、はぁっと息をついて困ったように笑いながらその正体を明かした。

「…志村転弧。ヒーローに憧れてたガキの名前」

過去形…つまり弔さんの昔の友人とかだろうか。
弔さん曰く彼は男性で私が心配するような関係じゃないと。
安堵からため息をついた私を見て弔さんは笑っていた。

それから少しだけその志村転弧さんについて話を聞くと、弔さんは意外とすらすらと話してくれた。
仲間外れの友達にも声を掛けるような奴で、ヒーローに憧れていたけど家族には反対されていたと。

「転弧さん、今頃ヒーローになってるでしょうか？」

「…さぁね」

けれど歯切れ良く話す割に弔さんの瞳は徐々に曇っているような気がして、思い出したくない記憶を思い出させてしまっているのかもしれないとようやく気づいた私はこれ以上の詮索をしなかった。
　
　
　