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「あ」
「あ？」
温泉ではついトガちゃんと長話をして逆上せてしまい、少し涼もうとテラスの窓を開けると先客がいた。
「荼毘さん顔赤いですね？」
「あぁ…熱には弱いんだ」
どうやら荼毘さんも温泉で逆上せてしまって涼みに来ていたらしい。
空いている隣の椅子に腰掛けて、大きく息を吸い込むとひんやりとした空気が体に染み渡って心地いい。
「…なぁ、お前のことだから気付いてんだろ」
ピクリと耳が動く。
集会後のここ数日で私は少し単独で探りを入れていた。
そしてその中であのホークスを解放軍に手引きしたのは荼毘さんであるということを知った。
「はい。スパイなんて随分大胆なことするんですね、公安も」
「ッハ…やっぱりスパイだったのかあいつ」
尤も、私の個性が成長し第六感に目覚めていると知っていればこんな愚策はしなかっただろう。
私の個性詳細は雄英経由でヒーロー側には筒抜けだろうが、その情報は雄英時代で止まっている。
つまり連合加入後に覚醒した第六感やハウンズモードについては知らないはず。
荼毘さんもきっとホークスが弔さんに抱く敵意をすでに私が感知しているだろうと踏んでこんなことを言ってきたのだろう。
"やっぱり"ということは荼毘さんもハナから奴を信じてなどいなかったみたいだが、だとしたら何故わざわざ敵を潜り込ませるようなことをしたのか。
その疑問をそのまま口に出すと荼毘さんはいつもの不敵な笑みを浮かべた。
「俺の目的のためさ…お前にとっちゃ見過ごせねぇだろうが、少し待ってくれよ」
つまり意図的に泳がせていると。
確かに私からすれば弔さんを脅かす奴を一刻も早く排除したい、見過ごせない。
でもそれは荼毘さんの目的の邪魔をすることになる。
「目的の詳細は聞きませんが、いつまで待てばいいんでしょうか」
「確実に弱みを握るまで、かな」
連合のみんなはこれまで私の身勝手な行動も容認してくれた。
何にも縛られず自由にやるのは私たちの本領で、荼毘さんもそれは同じ。
だから荼毘さんが好きでやっていることを私が邪魔をすることなんてできない。
「…わかりました。信じます」
「助かるぜ」
ここにきて私の荼毘さんに対する信頼は揺らぐことはなかった。
けれど仲間や自らが危険に晒される要素を残しておくのには不安が残る。
やはり完全に野放しにしておくわけにはいかない。
「でも、もし奴が何か不審な動きをするなら…何かしら手を打ちたいです。その時は事前に相談させてください」
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作者名：さかさま | 作成日時：2022年4月20日 22時
