53 ページ5
「あの、寝袋か来客用のお布団とかって」
「ない」
ですよね。
今日はいつもよりかなり早起きをしてしかも激動の一日だった。とっくに日付は変わっていて先ほどから眠気と戦っていたけれどそろそろ限界。
しかし部屋にある寝具は死柄木さんのシングルベッド一つだけ。仕方がないと固いフローリングの床に寝転がる私に、さっきからPCをいじっていた死柄木さんはぎょっと目を見開いた。
「は？何してんだ」
「いや、床で寝ようと…」
「何のためにここ来たんだよ。床で寝るくらいならバーのソファで寝たほうがマシだろ」
「大丈夫です。うち日本家屋でずっと敷布団で寝てたので。多少硬くても慣れてますから」
「冗談だよな？いいからベッド使え」
床に仰向けになって目を閉じれば案外いける気がしてきた。眠気の限界でもう寝れればなんでもいいやと思考を放棄した私だったが、死柄木さんの自分の寝床を譲る宣言には黙っていられず体を起こす。
「いやさすがに家主を床で寝かせるわけにはいきませんよ」
「なんで俺が床で寝ることになってんだ」
一瞬の間。
「2人でも寝れるだろ。お前チビだし」
聞き間違いかと思った。でも死柄木さんは俺も寝よとか言ってPCをシャットダウンしてさっさとベッドに入ろうとしている。
「…待ってください。婚前の、いやそれ以前に交際していない男女が床を共にするのは不健全では」
いつのまにか無意識に床に正座してしまった。
さすがにそれは無理だ。眠れる気がしない。
「おーおーお堅いねぇ」
そんな私を天然記念物でも見るかのように興味深そうな視線を向ける死柄木さん。
私が意識しすぎなのかとも思ったけどそんなことない。さすがにお付き合いもしていない男性と一緒に寝るのが普通じゃないことくらい私でもわかる。
「さっきは全裸でくっついてきたくせに…」
「全裸ではないです！ていうか忘れてくださいと言ったはずです！！」
またそうやってすぐいじわるなことを言う。
というか死柄木さんは私と一緒に寝ることに対してどうも思わないの？少しも意識しないの？
そりゃしないか。だって私は死柄木さんのことが好きでも死柄木さんはそうじゃない。
ていうか言ってたし、こんなガキ相手にさからないって。私だけこんなに慌てて馬鹿みたいだな。そう思うと急に虚しくなって泣きそうな時みたいに鼻の奥がツンとした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 299人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さかさま(プロフ) - レナさん» 荼毘の長男属性を書きたすぎて…！その後の2人の暴言の応酬も個人的にお気に入りです！細かい言葉選びまで注目してくださって嬉しいです！コメントありがとうございました！！ (2023年1月7日 19時) (
レス) id: b42d64db62 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 初めまして！レナです！この作品凄く好きです！夢主が“おひげ”って言ってるのも可愛いですし、茶毘の“オニーチャン”のシーンはツボにハマリました！これからも頑張って下さい！長文失礼しました！ (2023年1月6日 22時) (レス) @page47 id: 9c53f1b813 (このIDを非表示/違反報告)
さかさま(プロフ) - シュウさん» とても嬉しいです；；ありがとうございます！こちらこそ今後ともお楽しみいただけると幸いです！楽しんでいただけるように頑張ります٩( 'ω' )و (2022年1月8日 1時) (レス) id: 93aeaedad7 (このIDを非表示/違反報告)
シュウ(プロフ) - おすすめで見つけて余りにも面白くて一気に読んでしまいました…！これからも更新楽しみにしています！作者様のペースで頑張ってください、応援しています٩( ᐛ )و (2022年1月7日 22時) (レス) id: c0e764e76b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかさま | 作成日時：2021年12月31日 11時
