＊悟という男 ページ15
翌日。
言われたとおり、坂本はお嬢様と自分の分の朝食を運ぶため、厨房を訪れると食事を作っていた長野が、振り返って心配そうな表情で口を開いた。
長「おはよう、坂本くん。
昨日は、大丈夫だった？」
坂「あぁ、まぁな。
お嬢様の食事、出来てるか？」
長「出来てるよ。朝は軽めって聞いたから、スープとバターロール、スクランブルエッグにしたけど……」
坂「サンキュ。
俺の分も貰っていいか？」
長「いいけど……また、ここで食べないの？」
坂「しばらくは」
ワゴンに二人分の食事を載せている坂本に、長野はてを拭きながら聞くと、水差しにりんごジュースを注ぎながら答えた坂本。
長「……理由、あるの？」
坂「……」
長「坂本くん……教えてよ。お嬢様が今、なんて思ってるのか」
坂「お前らは……知らなくていいよ」
長「っ………」
寂しそうに笑う坂本を見た長野は、目を見開くと彼はワゴンを押して厨房を出ていった。
坂「A〜」
「はぁ〜い」
坂「入るぞ」
「どうぞ〜！」
Aの部屋に来た坂本は、そう声をかけると中へ入っていった。
その様子を、長野に言われたのか自分で思って行動したのか、剛と健が密かに物陰から見つめると、扉の近くにより聞き耳を立てた。
その頃、中では目覚めのハーブティーを飲んでいたAの前に、朝食を出すと坂本はその向かい側に座った。
「まさ、ごめんね。私のせいで……」
坂「気にすんなって。俺は、逆に嬉しいよ。少しでも長く、Aのそばにいれんだから」
「まさ……」
坂「でも、いつまでもここで食べるのは良くない。」
「……知ってる」
坂「井ノ原に、言われたんだ。」
「井ノ原さんに？」
坂「うん。
Aお嬢様に助けてもらったから、今度は俺達が助けたい。
そう言ってたよ」
「……」
坂「だからさ、言ってみない？」
「言うって……何を？」
坂「一緒に食べてほしいって。」
坂本の言葉に、バターロールをちぎる手を止めたA。
「で、でも……迷惑だよ……私はいいけど、向こうにとったら」
坂「そんなの、聞いてみないとわかんねぇじゃん」
「そうだけどさぁ……」
坂「A、言ってたじゃん、昨日。
あの執事達と仲良くなりたいって」
「……まぁ、うん」
坂「これをいい機会にさ、言ってみろよ。
あいつらの事だから、喜んで一緒に食べてくれるよ」
「ほんと？」
坂「あぁ。」
「まさがそういうなら……」
渋々Aが頷くと、坂本も満足そうに笑った。
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作者名：V-GIRL | 作成日時：2018年4月10日 19時
