優雅な時間 ページ31
予めパックンには外で待機してもらい、見張りを任せた。少し歩くと食事やダンスを楽しむ貴族たちの中に、見覚えのある後ろ姿を見つけた。この中では不自然な暗い格好だったが、その青い髪で直ぐに彼女だと分かった。
キーラ《見つけたか》
大丈夫。2人がいる。例えここで乱闘になったとしても、味方が居るだけで安心感が違う。意を決して彼女に近づいた。
アナウンス「紳士淑女の皆様。只今よりメインであるダンス披露会を行います。立候補される方は中央においでになり、パートナーとダンスをお楽しみください」
あと一歩のところで彼女との間が人で遮断される。そのままひとの波に押されて無理くり中央に出る羽目になってしまった。周りはパートナーと踊り始め、相手が居ないAがより目立つ。慌てて人の中に紛れようとした時、後ろから手を掴まれた。
『!』
そこには、虚ろな目でAをじぃと見つめる彼女、ベレスがいた。ただでさえ目立つ彼女がわざわざ更に目立つ中心にやってきて、Aの手を握る意図が分からない。
ダーズ《ほぅこやつもか。貴様が寝ていた時にも、ルキナとやらがお前に心酔したまま取り憑かれていたな》
(そんな事が…だとしたら、これは好機…!)
目の前のベレスもAに情を持ったままなら…僅かな希望に、腕の力が緩んだ。そして彼女の両手を取り、面と向き合った。
ベレス「…A、なの?」
『ええ。一緒に、踊って頂けませんか?』
ベレス「…喜んで」
少し伏せ目になって頬を赤らめる。やっぱり彼女はAへの情がまだ残っていた。優しく手を握り返してステップを始める。キングクルールと踊った経験が、ここに活かされるなんて…。もっと激しい闘いになると思ったのに、すっかり拍子抜けしてしまった。それでも気を引き締めて、一曲を最後まで踊りきったAは最後にベレスの額にキスを落とす。
『ありがとうございます。…全て終わったら、また踊りましょう』
少し気障だったか、しかし彼女の反応は思った通りのリンゴ色でAはすっかり気分がよくなっていた。二曲目が始まる前に外へ連れ出し間髪入れずに抱きしめる。ベレスはフィギュアになる瞬間安らかに笑っていた気がした。
『ふぅ…ずっと気を張ってたからか肩が痛い…』
そういえばベレスがいるのなら、ベレトはどこにいるのだろうか。
キーラ《しゃがめ!》
突然脳に響く言葉に反射でその身を縮こませた。凭れていた壁にヒビが入った。
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粗大ゴミ(プロフ) - 青い氷さん» コメントありがとうございます!こんな妄想の垂れ流しを褒めてくださるなんて嬉しいです…!拙い駄文ですがゆっくり投稿していきますので是非最後までお付き合い下さい(*^^*) (2022年8月13日 15時) (レス) id: fd182a523e (このIDを非表示/違反報告)
青い氷(プロフ) - すごく面白いです!更新頑張ってください!!応援してます! (2022年8月11日 21時) (レス) id: 76e242a4de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:粗大ゴミ | 作成日時:2022年6月16日 1時